PMS/生理 ココロの処方箋 連載 by 小嶋美樹

【公認心理師・山名裕子先生のココロの処方箋】〈CASE:6〉不安はもっとも厄介な感情!? PMDDからくる不安感の対処法!

月経やPMS(月経前症候群)、セクシャルな問題など、女性には特有の悩みや不調がつきものです。その症状は、痛みとなって身体に現れるだけでなく、時に女性の心にも重くのしかかります。なかなか人に話すことができないそんな女性特有の心の問題への対処法を、公認心理師の山名裕子先生に伺います。

今回のお悩み〉

「生理前になると、心が不安定になるタイプです。その時期になると、いつも以上に自信が持てなくなり、自分の仕事ぶりは上司にどう評価されているのだろう、と漠然とした不安感に襲われ、仕事を休んでしまう日も。不安な気持ちを軽減することはできますか?」(30代・団体職員女性)

PMDDの場合、まずは感情を整理!

「月経が始まる数日前から、女性の心身にさまざまな辛い症状が出ることをPMSと言うのですが、そのなかでも特に、心の不安定さが強く出てしまい、日常生活に支障をきたすような場合をPMDD(月経前不快気分障害)と呼びます。

PMDDの症状は、抑うつ感やイライラなどを感じたり、今回の相談者さんのように、不安感情が強くなったりと人それぞれ。原因ははっきりとは解明されていませんが、PMS同様、女性ホルモンのバランスが乱れることから起こるのではないかと考えられています」(山名先生、以下同)

PMDDの場合、ホルモンバランスの乱れから心が不安定になるわけですから、言ってしまえばそれは「女性ホルモンに左右された感情」であるとも言えるのですね。

「そうですね。産後すぐの女性が陥りやすい産後鬱の状態と同じで、PMDDの場合、漠然とした不安感を抱く方が多いようです。たとえば、ほんの些細な上司の一言をいつも以上に気にしてしまったり、相手がそんなつもりで言ったわけではないことを必要以上にネガティブに捉えたり……

今回の相談者の方と同じような悩みを私のメンタルケアオフィスのクライエント様から受けた場合には、まずは感じている不安感を言葉にして吐き出していただき、きちんとその感情を整理することから始めるようにしています」

不安感はもっとも言語化しにくい!?

「そもそも不安な感情は、他の感情に比べて、言語化しにくいと感じる人も少なくありません。喜びや悲しみ、怒りの感情は、何がどう嬉しいのか悲しいのか、イライラするのかを言葉にして言い表しやすくもあります。でも、不安な気持ちは、原因が不確かなぼんやりとしたものの場合が多いのです。

最近はコロナ禍での日常に不安感を覚えている人も多いことでしょう。では、その日々でなんとなく感じている不安の原因は何なのでしょう? コロナに罹患するかもしれない不安なのか、先行きの見えない未来への不安なのか、経済的な不安なのか……。不安な気持ちを軽減するためには、まず自分の感情を言語化することで原因に注目する必要があるのです」

原因が分かって初めて、解決策を練ることができるのですね。

「その通りです。たとえば罹患に対する不安ならば、免疫力を高めたり、罹患を防ぐための工夫を最大限に考えるべきです。仕事や経済的な不安ならば、職を失ったり、収入減になった場合の対策を考えてみよう……など、いま何ができるかということに集中できます。

『上司が何を考えているか分からず不安だ』という方に対しては『その思いをまずは素直に丁寧に上司に伝えて、相手の考えを聞いてみましょう』とお話しさせていただきます。また、『上司の仕事に対する評価が低いように感じている』と考えているのであれば、思い当たる自らの行動で変えられる点はあるのかを一緒に考えていきます」

行動に起こすことで、不安感も軽減されるのですね。

「そうですね。でも、いざ行動を起こしてみると、実は自分の不安は杞憂だったということも多いのです。すべてを払拭することができなくても、不安感を具体的に言語化してみることで、いま何ができるかが見えてきて徐々に前向きな気持ちを取り戻すことは可能なのです」

「不満」は我慢できても「不安」は無視できない?

「もうひとつ、不安な感情に関してお話させていただきたいのは、『人は不満は我慢できても、不安は我慢できない』ということです。たとえば今の職場の環境が悪く、不満を感じていたとしても、自分自身の言動を変化させることや、新しい環境に一歩踏み出す不安感の方を大きく感じる人のほうが多いということ。未来への漠然とした不安に極度に恐怖を感じる人も少なくありません。

ただ、きちんと不安な感情を整理して、できることから始めてみると、自身の状況が冷静に判断できるようになってくるもの。そうなれば新たな選択肢も見えてくるかもしれません」

不安な気持ちと向き合うことは、勇気のいることですよね。

「しかしそこから一歩踏み出すことさえできれば、解決の糸口は見つかるはずです。PMSPMDDの症状に思い当たる節のある人は、月経開始後の心が安定している時期に、自分が感じていた不安感を書き出すなり、人に聞いてもらうなりして、ぼんやりとしていた感情の輪郭を明確にしてみることから始めてみてください」

まずは自分自身の身体と心を把握し、きちんと向き合うことが問題解決の第一歩なのでしょう。

山名裕子氏

1986年生まれ、静岡県浜松市出身。公認心理師。「やまなmental care office」を東京青山に開設。心の専門家としてストレスケアからビジネス・恋愛などの悩みへのカウンセリングを行っている。メディア出演や講演会活動も多数。

山名裕子YouTubeチャンネル:「心の専門家チャンネル

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小嶋美樹
編集者、ライター、ディレクター。大学卒業後、出版社に勤務し、女性誌や実用書・ビジネス書の編集、WEBディレクターなどを経て、2020年からフリーランスに。現在は主にインタビュー記事や女性のライフスタイル・子供の教育系記事の執筆、韓国エンターテインメント記事の編集・執筆など行う。趣味は旅行で、今一番欲しいものは子供たちと日本中を旅して回れるキャンピングカー。