PMS/生理 ココロの処方箋 連載 by 小嶋美樹

【公認心理師・山名裕子先生のココロの処方箋】〈CASE:5〉PMSで仕事仲間にイライラ…には「アンガーマネジメント」が有効!

月経やPMS(月経前症候群)、セクシャルな問題など、女性には特有の悩みや不調がつきものです。その症状は、痛みとなって身体に現れるだけでなく、時に女性の心にも重くのしかかります。なかなか人に話すことができないそんな女性特有の心の問題への対処法を、公認心理師の山名裕子先生に伺います。

〈今回のお悩み〉

PMSの症状に悩んでいます。私は身体的な症状よりも、精神的な症状のほうが辛く、月経前の時期になるとイライラが止まりません。特に、仕事中は同僚や後輩の仕事ぶりにつねにイライラしてしまい……そんな自分に自己嫌悪です。何か対処法はありますか?」(40代・会社員女性)

アンガーマネジメントとは?

PMSは月経が始まる数日前に現れる、腹痛、頭痛、倦怠感などの身体的症状や、動悸、悪寒、めまいなどの自律神経失調症状、情緒不安、抑うつ気分、イライラなどの精神的症状が現れるもののことを言います。月経時に現れる月経困難症と似ているのですが、その違いは症状が現れる時期です。月経の開始とともに辛い症状が収まる場合には、PMSを疑ってよいかと思います。

月経前の黄体期に女性の身体のなかで起こるホルモンの急激な増減によって、ホルモンバランスや自律神経が乱れることが原因ではないかと考えられています」(山名先生、以下同)

今回の相談者さんのように「普段以上にイライラしてしまう」という人も多いようですね。

「そうなんです。PMS症状を和らげるためには、まずは薄着を控えて身体を温めたり、規則正しい生活習慣を心がけることが何よりも大切です。ただ、それでもどうしても心が不安定になりがちだという方に、今回はイライラの対処法であるアンガーマネジメントという方法を紹介します。

アンガーマネジメントとは、その言葉通り、怒りの感情を管理すること。怒りを表現することで後悔しないよう、表現の仕方や伝え方を変えていき、イライラすること自体を軽減したり、周りとの関係性を良好に維持するためのスキルなのです。

『管理する』と聞くと、怒りを感情のままに爆発させてしまいがちな人のための手段だとイメージされる方もいるかもしれませんが、それだけではありません。怒りの感情を表には出さず、自分のなかに溜め込んでしまう『抑圧型』の人にも有効な方法なのです。特に日本人は、この抑圧型の人が多いように感じます」

「自分さえ我慢すれば、この場が収まるだろう」と、怒りを外に吐き出さないことが癖になってしまっている人っていますよね。

「イライラをとりあえず飲み込むタイプの人は、一見すると怒りをコントロールできているかのように思えるのですが、実はまったくの逆。抑圧し、我慢することは心に負荷がかかります。こうして徐々に溜まったストレスが、心や身体を蝕んでしまうことだってあるのです」

怒りは「2番目の感情」

「そもそも『怒り』というのは『2番目の感情』だとも言われていることをご存じでしょうか? イライラしたり、カッとなったりする前には、実はその怒りの原因になっている『1番目の感情』がある場合が多いと言われているのです。

たとえば、職場の後輩の資料作成が遅れていることに対してイライラしたとします。しかし、よくよく分析してみると、その感情のひとつ前には『普段から仕事に対して熱意を感じられない後輩への落胆』という感情が隠れていたりします。

もしくは、後輩とは関係のないところで、『最近、多忙で疲れがたまっているのに、誰も分かってくれない悲しみ』という感情がある場合もあるでしょう」

その1番目の感情』によってイライラが引き起こされるのですね?

「その通りです。この1番目の感情』に自分自身で気付くことができれば、怒りに任せた言葉を相手に発したり、イライラした態度を取ってしまい、その結果、自己嫌悪に陥る、という負のスパイラルを防ぐこともできる。これこそが、アンガーマネジメントのポイントなのです」

相手の怒りを受け止めることも!

さらに行っていただきたいことが、『1番目の感情』の原因になっている出来事を解決するための行動です。たとえば、日頃の後輩の仕事ぶりに納得いかない点があるのならば、それが怒りに変わる前に、前向きな言葉で伝えてみてはどうでしょう?

また、疲れからイライラしてしまうのであれば、事情を話し、その日は仕事を休ませてもらうでもいいでしょう。どうしても休めない場合にも、『実は今日、ちょっと疲れているんだ』と、事前に周りに声をかけておくだけでも状況が好転するかもしれませんよ」

怒りに変わる前に、ポジティブなコミュニケーションをとることで解決できる問題も多いのですね。

「そうです。そしてこのアンガーマネジメントは、自分の怒りをコントロールできるだけでなく、相手の怒りを冷静に受け止めることもできるのです。

相手がイライラしている場合、またはケンカになりそうな場面で、相手の1番目の感情』を想像してみてください。『怒り』に『怒り』で応戦していては状況が良くなることはありませんが、『1番目の感情』に着目した言葉掛けをすることで、ケンカを回避し、前向きな話し合いができるようになるかもしれませんよ」

アンガーマネジメントは、日々のちょっとした意識を変えるだけで身に付けることができるスキルです。PMSの症状でイライラしてしまいがちな人は、ぜひ実践してみてください。

山名裕子氏

1986年生まれ、静岡県浜松市出身。公認心理師。「やまなmental care office」を東京青山に開設。心の専門家としてストレスケアからビジネス・恋愛などの悩みへのカウンセリングを行っている。メディア出演や講演会活動も多数。

山名裕子YouTubeチャンネル:「心の専門家チャンネル

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小嶋美樹
編集者、ライター、ディレクター。大学卒業後、出版社に勤務し、女性誌や実用書・ビジネス書の編集、WEBディレクターなどを経て、2020年からフリーランスに。現在は主にインタビュー記事や女性のライフスタイル・子供の教育系記事の執筆、韓国エンターテインメント記事の編集・執筆など行う。趣味は旅行で、今一番欲しいものは子供たちと日本中を旅して回れるキャンピングカー。