お悩み相談室 連載 by 小嶋美樹

「甘い物のドカ食いOK」「頑張りすぎNG」…日々の工夫で症状が緩和される「薬に頼らないPMS治療」とは?

日々、PMSの辛い症状に悩む多くの女性たちの治療にあたっているゆみえ先生。今回は、PMS治療の現場で使用されている薬のお話や、投薬治療と合わせて行われている行動療法に関してお話を伺っていきます。

前編はこちら:

PMSのイライラや気分の落ち込みは「スマホアプリにメモ」で改善!? PMS最新ケア!

PMSには保険適用されている薬がない⁈

―現在、日本ではPMSの治療はどのように行われているのでしょう?

「実は日本では今、PMSという病名に対して保険適用されている薬がないのが現状なのです。ピルも月経困難症の治療で使用する場合にのみ保険が適用されます。そのため、諸外国の治療データをもとに、効果が見込めそうな薬を主に3種類、使用し治療にあたっています。ひとつがピル、もうひとつが抗うつ剤です。また、海外のデータとは関係なくよく処方されるのが漢方薬です」(ゆみえ先生・以下同)

「PMSでイライラして辛い」「生理前になると倦怠感で何も手に付かない」などの症状で医療機関を受診した場合には、それらの投薬治療が主なのですか?

「そうですね。ただ投薬だけではなく、日常生活でできる行動療法が有効なことも分かってきているので、私たち医師はPMSに苦しむ女性たちの日々の生活の立て直しにも力を注いでいます」

PMS期の「チョコレートが食べたい」は身体の正常な反応?

具体的にはどのような行動が有効なのですか?

「PMSには、“早寝早起き、腹八分”の生活が理想的です。ただ、いきなりそれを徹底するのは無茶なので、まず食べ物に関して言うと、過食がある患者さんには、『食べ過ぎるのを止めましょう』とは言わず、食べ過ぎてしまう際の工夫を一緒に考えたり、伝えたりしています」

「食べ過ぎないでください」と指導されるのだと思っていたのですが、違うんですね。

「止めろと言われても自分の意志ではできないので困っている患者さんに、無理に『ダメです』と言ってもストレスになるばかりで、かえって症状を悪化させる原因にも。それに、月経前に無性に甘い物を食べたくなる行動は、ある意味、理にかなった欲求でもあるんです。

PMS期にイライラしたりうつ状態になっている場合には、脳がフル回転してしまっていることも多く、そのため脳のエネルギー源になるブドウ糖を身体が自然と欲するのです。だから、甘いものがたくさん食べたくなるのはある意味、正当な理由だとも言えるのです」

「チョコレートがめっちゃ食べたい!」という欲求の裏で、そんなことが起こっていたのですね。

「だた、血糖値の乱高下は良いことではありません。そこで、急に血糖値が上がらないようにできるだけよく噛んで食べたり、口にする順番を工夫してみたりなどの対処法を伝えています。『チョコレートのドカ食いの前に、まずは一口だけでも先におにぎりを口にできない?』とか、『野菜スティックやところてんなどの繊維質を食べてから甘い物を食べてみようか』など、患者さんのできる範囲の提案を行うようにしています」

ちょっとした工夫が大切なのですね。

「そうですね。自分自身をコントロールできなくなるのも、ひとつのPMSの症状なのです。だから、どこかひとつでも自制できた場合には、そこにフォーカスして自分自身をうんと褒めてあげてね、とも患者さんにはアドバイスしています」

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小嶋美樹
編集者、ライター、ディレクター。大学卒業後、出版社に勤務し、女性誌や実用書・ビジネス書の編集、WEBディレクターなどを経て、2020年からフリーランスに。現在は主にインタビュー記事や女性のライフスタイル・子供の教育系記事の執筆、韓国エンターテインメント記事の編集・執筆など行う。趣味は旅行で、今一番欲しいものは子供たちと日本中を旅して回れるキャンピングカー。