【公認心理師・山名裕子先生のココロの処方箋】〈CASE:7〉夫とのセックスレス。「身体の結びつき」がもたらす女性の心身への影響とは?

月経やPMS(月経前症候群)、セクシャルな問題など、女性には特有の悩みや不調がつきものです。その症状は、痛みとなって身体に現れるだけでなく、時に女性の心にも重くのしかかります。なかなか人に話すことができないそんな女性特有の心の問題への対処法を、公認心理師の山名裕子先生に伺います。

今回のお悩み〉

3年前に結婚した夫とこの1年ほどセックスレスです。ただ仲は良く、私も特に不満はありません。今のままでいいかなと思う反面、夫との身体の結びつきがこのまま一生なくなることにも不安を感じています。パートナーとの身体の結びつきは必要なのでしょうか?」(30代・主婦)

セックスで心が安定

「セックスレスの問題は、私が勤務するメンタルケアオフィスのクライエント様からも日々よくご相談される事案のひとつです。ただ、今回のご相談者さまの悩みは、パートナーのどちらか一方が身体の結びつきを求めているのに、一方が拒否している、というケースではないので、特に問題はないように思います。

『パートナーとの身体の結びつきがなくても大丈夫?』と、心配されているようですが、お互いに納得しての形であれば何も問題ありません。ただ、幸せなセックスが女性の身体や心に良い影響を与える、ということも確かではあるのです」(山名先生、以下同)

「幸せなセックスが女性に与える良い影響」とは、具体的にはどんなことがあるのですか?

「たとえばお互いの合意にもとづいたセックスは、不安感を軽減したり、イライラを抑制したり、集中力を高めたり……。女性の心を安定させるとも言われているんです。また、女性ホルモンも活性化されるので、パートナーとのセックスが定期的にある女性とない女性を比べると、セックスライフを楽しんでいる女性の方が更年期の症状がよりなだらかに起こる、なんて効果も認められているんですよ」

まさに心にも身体にも良いことだらけですね。

「ただ、だからと言って無理にセックスをする必要はありません。前述したような効果はセックス以外の方法でも得ることができるからです。現状、仲の良いパートナーの存在があって、お互いに望むのであれば、無理のない範囲で定期的に行うことはけっして悪いことではない、というだけなのです」

「セックスしたい」と言えない男性たち

「お互いが納得したうえで『私たちには必要ないね』となったのであれば、無理にセックスをする必要はないのですが、大切なのは、そのことに関してのパートナーの考えをさりげなく聞き出すことなのです。と言うのも、たとえば女性が『私たち、セックスはしていなくても仲良しだし問題ないよね』と思っていたとしても、実は相手の男性の本心は違っていたりするパターンもあるからです」

なるほど。たしかに「暗黙の了解」でお互いの総意がとれていると思い込んでいる人も多そうですよね……

「男性側は妻との身体の結びつきを望んでいるのに、妻に何度か断られるうちに、いつしか本音を封印してしまった、というケースも少なくありません。その最たるパターンが、妻の産後です。女性は出産や育児によって身体へのダメージや睡眠不足が続き、産後の数か月から数年にかけて、セックスに気持ちが向かなくなってしまう方も多いようです。産後のホルモンバランスの乱れが影響を与える場合もあります。

その期間に夫からのセックスを拒否し続けたことがきっかけとなり、以降セックスレスになってしまうご夫婦も多いように思います」

夫としても、理由が理由なだけに「本当はもっとセックスがしたい』とは言い出しづらいのかもしれませんね。

「そうですね。ただ、そこが一端となって夫婦仲に亀裂が入ってしまう場合も多々、見受けられるのです」

セックスの話をしよう

「そこで大切なのが、セックスに対するお互いの本音をさりげなく伝え合うことです。とは言っても、なかなか普段の生活の最中に、『最近セックスをしていないけど大丈夫?』と、切り出すのも難しい場合が多いかもしれませんよね」

たしかに「そんな話題を振って、気まずくなりたくない」と思ってしまいそうです。

「そんな場合には、それぞれが日頃なかなか言えない自分の気持ちを伝えやすい環境で2人の時間を作る努力が必要です。一緒に暮らしていたり、長く付き合っているパートナーとも、たまには待ち合わせをして外でデートをしてみたり、ホテルに泊まったり……。非日常感を味わえる雰囲気作りを心掛けてみてください」

ただ、小さなお子さんを育児中のご夫婦の場合、2人きりの時間を作るのは難しいかもしれませんね。

「そうですよね。でも、たとえば子供を寝かしつけた後のわずかな時間でもいいんです。一緒にお酒を飲んだり、テレビを観たりして、夫婦だけの時間を作る努力をまずは心掛けてみてください。日常とは少し雰囲気を変えたムードの中でなら、セックスライフの話も気まずくならずに切り出せるかもしれませんよ。

ただ、セックスについて何度も回数を重ねて話し合いすぎてしまうことには注意が必要です。なぜなら、それが原因となってセックスレスに発展してしまうケースもあるからです。セックスに関して深い話をしすぎることがマイナスに働くこともあるので、2人で1度話し合ってみても解決策が見いだせないようであれば、第三者をはさむカップルカウンセリングもおすすめですよ」

PMSPMDDの症状緩和にも

「人の心と身体は、自分が思っている以上に密接に繋がっており、影響し合っているのです。セックスを含むパートナーとの時間のなかで心が満たされれば、ストレスが軽減され、ストレスが減れば自律神経やホルモンバランスも整います」

心と身体、両方の健やかさが大切なのですね。

「その通りです。また、たとえばPMSPMDDの症状で精神的に不安定になりがちな方や、生理前になるとパートナーとのケンカが増えてしまいがちな方は、日頃から心が安定した状態にあることで、それらの辛い精神症状が軽減されることもあるのです。

お互いの同意にもとづいたセックスライフを送ることで、愛する人に求められ、大切にされている、という幸福感が女性の心身に良い影響を与えることは間違いないのですが、セックスがあってもなくても、最も大切なのはパートナーとのコミュニケーションだと言うことを忘れないでください」

日本人は性やセックスに関する会話を避けがちな傾向がありますが、どちらかが我慢をしている状況では、いつか綻びが生じてしまいます。自分たちなりのセックスライフをパートナーと見つけられたらステキですね。

山名裕子氏

1986年生まれ、静岡県浜松市出身。公認心理師。「やまなmental care office」を東京青山に開設。心の専門家としてストレスケアからビジネス・恋愛などの悩みへのカウンセリングを行っている。メディア出演や講演会活動も多数。

山名裕子YouTubeチャンネル:「心の専門家チャンネル

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