【公認心理師・山名裕子先生のココロの処方箋】〈CASE:2〉コロナ禍における生理不順、生理痛への対処法は?
月経やPMS(月経前症候群)、セクシャルな問題など、女性には特有の悩みや不調がつきものです。その症状は、痛みとなって身体に現れるだけでなく、時に女性の心にも重くのしかかります。なかなか人に話すことができないそんな女性特有の心の問題への対処法を、公認心理士の山名裕子先生に伺います。
〈今回のお悩み〉
「ここは半年ほど、生理周期が安定せず生理痛も以前より辛いです。コロナ禍のストレスでずっと心が晴れないせいかもしれないなと思っているのですが、改善する方法はありますか?」(30代・自営業女性)
生活変化からのストレスが原因の場合も
「新型コロナウイルスの感染予防対策で、通学や通勤の機会が減ったり、休日に人と会えなくなったり、こまめな手洗いや消毒が必要だったり……。ここ1年で人々の生活様式は急激に変化しました。人間はそもそも、“変化”に弱い生き物です。長引くコロナ禍の日々のなかで心に蓄積したストレスが今、女性たちの心身にダメージを与えているように感じます」(山名先生、以下同)
―今回の相談者さんのように、月経周期が不規則になってしまったり、月経痛がひどくなったり、なかには月経が止まってしまう女性もいるそうですね。
「そうなんです。そういった症状を自覚したら、まずは婦人科やレディスクリニックを受診することが先決です。なかには、婦人科系の病気が原因になっている場合もあり、その際には適切な治療を受ける必要があります。しかし、病的要因が見つからなかった場合には、コロナ禍におけるストレスが原因になっている、ということも十分に考えられます」
生理をネガティブにとらえすぎない!
「なかにはコロナ禍の生活様式のなかで、自分の月経が不順になってしまっていることに気が付いていない女性もいるかもしれません。以前だったら“平日は通勤や通学、週末は休日”といったように、規則正しい生活リズムの中で月経も巡ってきていたのに、今は通勤日と在宅日が混在したり、起床時間が不規則になったり……。月経周期がいつもと違うことに、女性たちが気付きにくい生活パターンに陥ってしまっているかもしれません」
―たしかに『生理が飲み会とかぶらないかな』とか『温泉に行く日は生理とかぶらない日にしよう』など、女性が月経周期を気にするタイミングが、コロナ禍の日常では減っていますよね。
「あるクライエント様が『生理不順で回数が減って、ラッキーかもしれない』とおっしゃったことがありました。大変なことも多く、どうしてもネガティブに捉えがちな月経ですが、『生理はめんどくさい』『なくなってしまえばいい』など“生理=悪”と思わせるような言葉ばかりを口にすることはあまりおすすめできません。
と言うのも、人間は自分が口にした言葉に知らず知らずに影響を受けてしまう生き物なのです。『生理がいやだ』と繰り返し口にすることで、その言葉が耳から脳に伝わり、心が一層ネガティブな方向に引っ張られてしまいます。
逆にポジティブな言葉を発し続けていると、気持ちも明るくなるものです。月経は女性にとってなくてはならない大切なもの。思い当たる方は、少しでも快適に月経周期を乗りきるために、ぜひ心掛けてみてください」
周囲に症状を共有することも大切
「長引くコロナ禍のストレスに、運動不足や生活環境の変化も重なり、月経痛が以前よりも強く出るようになってしまった女性もいるかもしれません。そんなときには無理をせずに、休息をとることが大切です。
ただ、月経の痛みには個人差があり、それを人と比べることもできないので、苦痛を我慢し続けてしまう女性も少なくないのではないでしょうか。日常生活を送るのも困難なほどの痛みを抱えていても、『女性はみんな辛いのに、自分だけが生理痛で休むわけにはいかない』と、休息をとることに抵抗感がある人も多いように感じます」
―たしかに、月経痛の度合いは人と比べることができないので、どこまで我慢をすればよいのか難しいなって思ったりします。
「その場合、周囲の人に月経痛の辛さをきちんと共有することも大切です。たとえば会社の人や家族に自分の症状や辛い周期、どのようなサポートが必要なのかを、きちんと言葉にして伝えることから始めてみてください。
日本の社会には、月経の話をすることがはばかられる風潮がありますし、男性には月経の体験がありません。月経の痛みの度合いに個人差があることすら知らない男性もいるでしょう。無知であるがゆえに女性に寄り添えないでいる男性もいるはずですから、どんな症状があり、どのような手助けが必要なのか、思い切って話をしてみることが大切です」
―我慢がストレスになり、さらに症状が悪化する悪循環を生まないためにも、周囲の協力を得ることが大切なんですね。
「その通りです。日本人は“耐える美”を良しとする文化がありますが、そもそも女性ばかりが我慢を強いられるのはおかしな話ですよね。今は医学が進歩し、月経に伴う痛みや苦しみ、心のモヤモヤをコントロールできる手段も多数あります。
コロナ禍での生活様式の変化なかで、知らず知らずのうちに心に大きな負荷がかかっていることを自覚して、“無理をしない”“我慢をしすぎないで人に頼る”ことを心がけてみてください」
今後女性の問題を「他人事」にしない、家族や社会のサポートにも期待したいです。
山名裕子氏(やまな ゆうこ)
1986年生まれ、静岡県浜松市出身。公認心理士。「やまなmental care office」を東京青山に開設。心の専門家としてストレスケアからビジネス・恋愛などの悩みへのカウンセリングを行っている。メディア出演や講演会活動も多数。
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