PMS/生理 ココロの処方箋 連載 by 小嶋美樹

【公認心理師・山名裕子先生のココロの処方箋】 〈CASE:1〉コロナ禍でPMSが急増!? カタルシス効果で、イライラ&憂鬱に対処しよう

月経やPMS(月経前症候群)、セクシャルな問題など、女性には特有の悩みや不調がつきものです。その症状は、痛みとなって身体に現れるだけでなく、時に女性の心にも重くのしかかります。なかなか人に話すことができないそんな女性特有の心の問題への対処法を、公認心理師の山名裕子先生に伺います。

〈今回のお悩み〉

「数年前からPMSのさまざまな症状に悩んでいたのですが、コロナ禍の日々のなかで、PMSに伴うイライラや憂鬱感といった心の症状が、より強く出るようになりました。少しでも軽減する方法はありますか?」(20代・会社員女性)

人間は変化に弱い生き物?

 

「終わりの見えない新型コロナウイルス感染予防対策の日々のなかで、今、心身のバランスを崩す女性たちが急増しているそうです。事実、私のカウンセリングオフィスのクライエント様にも、生活様式の変化に伴う心の不調を訴える女性が多くいらっしゃいます。

もともと人間は変化に弱い生き物だということをご存じでしょうか? 変化が小さくても大きくても、それがたとえ自分にとってプラスに感じるものだとしても、人は変化にストレスを感じる生き物なのです」(山名先生、以下同)

去年から今年にかけて、働き方、余暇の過ごし方、友人や家族との距離感やコミュニケーション手段に至るまで、人々の日常が急激に変化しましたよね。

「そうですね、そういったあらゆる環境の変化が、知らず知らずのうちにストレスとなって積み重なり、心の不調を招く人が増えています。PMSのあらゆる症状は、月経前の黄体期に女性の身体のなかで起こる女性ホルモンの急激な増減によって引き起こると考えられています。コロナ禍の変化に伴うストレスが重なると、女性ホルモンのバランスがさらに乱れ、PMSの症状が強く出てしまうのです」

月経前の黄体期に関しての詳しい記事は、こちらをチェック!

フェムテック tv:「生理前や生理中、甘い物が止まらない…」と悩む女性必見!罪悪感なく食べられるおやつリスト

生活リズムと運動習慣の見直しを!

コロナ禍の生活はまだしばらく続きそうです。PMSに伴う気分の浮き沈みに悩む女性は、今の生活のなかでどういったことに気をつければよいのでしょう?

「たとえば『コロナ前に比べて、通学や通勤の回数が減った』という女性のなかには、知らず知らずのうちに起床時間が以前より遅くなっていたり、日によってバラバラになっていたりする人も少なくないように感じます。まずは、できる限り生活パターンを一定化し、以前のリズムを取り戻すことが大切です。

また、在宅時間が増えたことで、以前は通っていたジムや運動系の習い事に行けなくなってしまったことによる運動不足に陥っている方も。心と身体は、私たちが思っている以上に、連動していることを覚えておいてください。

運動不足で身体が重くなると、新しいことに一歩踏み出す際の心の踏ん張りが効かなくなったり、いつもは気にも留めない何気ない出来事にストレスを感じたり、ポジティブな心の状態ではいられなくなってしまいます。コロナ禍の日々で、PMSの症状としての憂鬱感やイライラが以前より強く出てしまっている方は、まずは生活リズムを見直し、運動不足の改善を試みてみましょう」

『カタルシス効果』を利用しよう

他にも、コロナ禍での日々のなかで、女性たちを苦しめるストレス要因のひとつになっているのが「会話の減少」だそうですね?

「心理学的には『カタルシス効果』と言うのですが、人は苦悩や悩みを口に出して言うことで、それがたとえ直接的な解決に至らなかったとしても、心の浄化作用になる、という考え方があります。しかし今は、ZOOM授業になったり、在宅勤務になったりしたことで、誰かと会話をする時間がぐんと減ってしまっているのです」

学校や会社で友人や同僚と何気なく話していた時間も、実はストレスを軽減させるためには重要なポイントだったのですね。

「これまでは、ちょっとした心のモヤモヤや負の感情は、日常生活のなかで誰かに聞いてもらうことで、知らず知らずのうちに解消されていました。ところが、今は何気ない会話の機会が減ったことで、心に蓄積してしまっている女性も多いのです。

同様の悩みを相談されるクライエント様に対して、私はカウンセリングの際に『話せる相手を見つけていきましょうね』とお話ししています。必ずしも対面でなくてもいいので、ZOOMでも電話でも、意識的に人と話す時間を日々のなかに設けることが大切です」

ただ、なかにはわざわざ時間を作ってもらってまで、自分の悩みや心の内を人に聞いてもらうことを心苦しく思う女性もいるのではないでしょうか?

「そうなんです。日本人は、『自分のことで人に迷惑をかけてはいけない』と思い込んでいる人が非常に多いように感じます。あえて相手に時間をとってもらってまで、自身のモヤモヤした気持ちを話すことに抵抗がある人は、心のケアの専門家に話を聞いてもらうのもひとつの手段です。

電話相談に応じているカウンセリングオフィスもありますし、感染症対策がきちんとなされている相談所や産婦人科に気分転換を兼ねて足を運ぶでもいいでしょう。専門家をもっと気軽に頼って欲しいなって思います。

PMSの症状からくる気分の浮き沈みを我慢しつづけた結果、うつ病を発症してしまうこともあります。PMSの心の症状に苦しんでいる女性のなかで、『最近、人との会話の機会が減ったな』と思い当たる人は、意識的に人と話す時間を設けるようにしてみてください」

まだまだ続くコロナ禍の日常。女性特有の心の苦しみは、我慢しすぎることなく、日々対処することが大切です。

山名裕子氏(やまな ゆうこ)

1986年生まれ、静岡県浜松市出身。公認心理師。「やまなmental care office」を東京青山に開設。心の専門家としてストレスケアからビジネス・恋愛などの悩みへのカウンセリングを行っている。メディア出演や講演会活動も多数。

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小嶋美樹
編集者、ライター、ディレクター。大学卒業後、出版社に勤務し、女性誌や実用書・ビジネス書の編集、WEBディレクターなどを経て、2020年からフリーランスに。現在は主にインタビュー記事や女性のライフスタイル・子供の教育系記事の執筆、韓国エンターテインメント記事の編集・執筆など行う。趣味は旅行で、今一番欲しいものは子供たちと日本中を旅して回れるキャンピングカー。