お悩み相談室 連載 by 小嶋美樹

PMSのイライラや気分の落ち込みは「スマホアプリにメモ」で改善!? PMS最新ケア!

月経前の気分の落ち込みやイライラ、だるさや過食衝動などの症状に悩む女性が多いなか、「スマホアプリを使用し、PMSの辛い症状を緩和させる」との画期的な研究が今、進められているそうです。今回は、PMSケアアプリの実用化を進めるチームの一員でもあるゆみえ先生に、最新のPMSケアに関して伺っていきます。

PMS治療には「日々の症状の記録」を付けることが大切

―ゆみえ先生も所属されている京都大学医学部婦人科学産科学教室「女性健康医学研究室」のチームでは現在、PMSに悩む女性たちのためのアプリ「せるふも」を開発中だそうですね。

「そうなんです。PMSのケアや診断・治療にとって重要な“セルフモニタリング”を誰もが手軽にできるように、との願いを込めて『せるふも』と名付けました。現在は、症状の記録を書き込んだり、医師からのアドバイスが定期的に配信されるこのアプリを使用することでPMSが本当に改善されるのか、比較実験を行っている段階です。

応募いただいたPMSの自覚症状のある女性たちのご協力のもと、約6カ月の比較実験を行う予定です。その後、数年以内にはアプリを実用化できたらいいなと考えています」(ゆみえ先生・以下同)

―PMSの辛い症状を自身で記録していくことが、PMS治療には大切なのだそうですね。

「PMSは、採血やレントゲンなどの検査で診断できる病ではありません。月経周期と共に現れるさまざまな症状を医師に自己申告することによってPMSの診断は下されるのですが、患者さんの多くが『生理前になるとイライラする気がする』『普段はそんなことないのに、鬱っぽくなる』など、自身の記憶だよりに申告されているのが現状です」

記憶だよりではどうしても曖昧な表現になったり、記憶が間違っていることも起こりますよね。

「そうなのですが、それでは的確な治療を行うことができません。そればかりかPMSと診断された患者さんのなかには、実はPMSではない方も多分に含まれているのではないかとも考えらえています。

それを防ぐためにも、学会のガイドラインでは、『PMSの相談に来た患者さんには、毎日、自身の症状の記録をとってもらうこと』となっているのですが、実際には、毎日のメモを持参して医療機関を受診される方は多くありません。そのため『せるふも』では、思い当たる症状にチェックを入れだけで日々のメモが取れるなど、より簡単に、正確に、PMSの記録をとる工夫を凝らしているのです」

たしかに「ノートに毎日、症状を書いてきてね」と言われるとハードルが高く感じますが、「スマホアプリに記録しておいてね」であれば、手軽にできるような気がしますよね。

「不安感や心のモヤモヤ」は書き出すだけで改善される!?

「もうひとつ、PMSの専門家の間で言われていることがあります。それが、『PMSでは、自身の症状記録を取ること自体が、症状の緩和に結び付くのでは』ということです」

記録をするだけでPMSの症状がラクになるってことですか?

「そうなんです。私たち医師は、『病態に対する薬の効果』を確認するときに、同じような症状を訴える患者さんを2つにグループに分け、片方のグループには効果が期待できる薬を投与。もう片方のグループには、プラセボ(治療効果の見込まれる有効成分を含まない薬)を投与して、その結果の差で薬の効果を確かめています。

そうやって薬のPMSへの効果を確かめる実験を行ってみると、実は2つのグループ間に明らかな結果の差が出ないことが多いんです。PMSの患者さんには、なぜかプラセボが効いているかのような結果が出ているんですよね……」

治療効果のないはずの薬が効いているなんて、一体なぜなのでしょうか?

「もちろん『PMSは偽薬で治っちゃう』というわけではなく、私たち専門家が注目をしたのは、『PMSの症状記録すること事態に効果があったのでは?』ということなのです。

具体的に説明すると、PMSの辛い症状として不安感や焦燥感を訴える女性も少なくないのですが、そういった症状を紙に書き出してメモを取ることで、漠然とした不安感などがいったん言語化されるわけです。

その結果、たとえば『言いようのない焦燥感にかられていたけれど、冷静になってみると大したことじゃないかも」とか『私の漠然として不安感は毎月、生理前の3日間だけだな』などの気づきを与えてくれ、また次に同じような感情が襲ってきたとしても、以前よりも落ち着いてやり過ごすことができるようになる女性も少ないないということなのです』

以前、カウンセラーの方に、「感情を言語化して見える化することで、漠然とした不安感などを払拭する」という認知行動療法があると聞いたことがあるのですが、まさに同じことですね。

「『生理前になると、私は落ち込みやすくなるタイプなんだ』とか、『世界中に味方が一人もいないような絶望感を感じることもあるけれど、生理が始まると毎月その気持ちも収まっているな』など、記録を取ることで明確になると、気分が晴れる方も。その結果、薬に頼らなくても自然とPMSの症状が緩和される、というわけです」

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小嶋美樹
編集者、ライター、ディレクター。大学卒業後、出版社に勤務し、女性誌や実用書・ビジネス書の編集、WEBディレクターなどを経て、2020年からフリーランスに。現在は主にインタビュー記事や女性のライフスタイル・子供の教育系記事の執筆、韓国エンターテインメント記事の編集・執筆など行う。趣味は旅行で、今一番欲しいものは子供たちと日本中を旅して回れるキャンピングカー。