お悩み相談室 フェムテック/ケア 連載 by 小嶋美樹

「春はPMSが悪化する」は本当?「季節性うつ」や「水毒」との関連性も!

月経が始まる数日前から、頭痛や下腹部痛、めまいや倦怠感などの身体の症状が現れたり、気分が落ち込んだりイライラするといった精神的な症状が現れ、日常生活に支障をきたすこともある「PMS(月経前症候群)」。そのPMSの辛い症状は、季節にも影響を受けるものなのでしょうか? 

そこで今回は『フェムテックtv』でも人気の産婦人科医・池田裕美枝先生こと“ゆみえ先生”に「PMSと春」をテーマにお話を伺っていきます。

「PMSが春に悪化する」といった科学的根拠はない!?

―春は、季節の変わり目の温度変化などで体調を崩したり、生活環境の変化に伴うストレスを感じる人も少なくないでしょう。なかには「PMSの症状も春になると悪化をする気がする」と感じている女性も。実際のところはどうなのでしょう?

「なかなか興味深い質問ですね。ただ、関連のありそうな医学論文をいくつか探してみたのですが、『PMSの症状が、特定の季節に悪化することが認められた』との結論に至ったものは、私が探した限りでは見つかりませんでした。つまり、今のところは『PMSが春に悪化をする』といった医学的根拠はないと言えそうです」(ゆみえ先生・以下同)

―そうなのですね。実は、「学校や職場が変わったり新たな人間関係が始まったりと、何かと変化の多い春にはPMSも悪化する傾向があるんです」なんて言われることを想定していたので、少し意外な気もしました。

「季節性のうつ」とPMSは混同しがち

「1つ考えられることとしては、うつ病には、日照時間などとの関連から、季節性のものがあることが認められています。そのため、『季節性のうつ』とPMSを混同してしまっている女性がいるのかもしれません。

また、新生活の緊張感やストレスで、いつも以上に心が不安定になったり落ち込んだりした場合に、それがちょうど月経の前の時期と重なることで、『今月はいつもよりもPMSが重くてイヤだなぁ』と思ってしまう女性がいたとしても不思議ではありませんよね」

―ただ、それらの症状はあくまで「うつ」の傾向が強まっただけで、「春という季節が、PMSの症状を重くさせている」というワケではないのですね。

「そうですね。PMSはもともと女性ホルモンのサイクルによって変化するものであって、そのサイクルが、春だから、冬だから、という季節に影響を受けることは、今のところ認められていません。私自身も日々、PMSの患者さんと接しているなかで、関連性を感じたことはないですね」

「水毒」の女性はPMSの症状も出やすい?

―PMS症状にも体のむくみや便秘、めまいがなどがありますが、これも水の巡りが悪いことで起こりがちだと聞いたことがあります。

「PMSは、月経前になると普段はまったく感じない身体の不調が現れる、というよりは、普段から抱えている不調が、月経前の時期になるとより強く出てしまう、という方がほとんでなんです。そういう意味では、春先など季節の変わり目で、気候的にも水毒になりやすい時期に、PMSにも通じる不調がいつもより出やすい傾向にある、ということは言えるのではないでしょうか」

―春先は、PMSに限らず、普段から抱えている女性特有の不調が出やすい時期であることは間違いないようです。次回は、新生活のなかで自分の心と身体を守る対処法に関して伺っていきます。

 

池田裕美枝先生

いけだ・ゆみえ 京都大学医学部卒業。「市立舞鶴市民病院」「洛和会音羽病院」にて総合内科研修後、産婦人科に転向。現在は「二宮レディースクリニック」での産婦人科外来、「神戸市立医療センター中央市民病院」の女性外来、「京都大学医学部附属病院」の女性ヘルスケア外来を担当。また、SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)の勉強会や啓もう活動を行う一般社団法人SRHR Japanの代表も務める。

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小嶋美樹
編集者、ライター、ディレクター。大学卒業後、出版社に勤務し、女性誌や実用書・ビジネス書の編集、WEBディレクターなどを経て、2020年からフリーランスに。現在は主にインタビュー記事や女性のライフスタイル・子供の教育系記事の執筆、韓国エンターテインメント記事の編集・執筆など行う。趣味は旅行で、今一番欲しいものは子供たちと日本中を旅して回れるキャンピングカー。