フェムテック/ケア by 寳田真由美

知ってる? 低用量ピルは、保険適用になるんです〈医師監修〉

低用量ピルの服用は、予期せぬ妊娠を防ぐ避妊目的と、毎月の生理の悩みを軽減する治療目的の二つに大別されます。しかし、「ピル」と聞くと、「副作用が怖い」「産婦人科を受診するのが面倒」「飲んでいることを人に言いにくい」など、ネガティブなイメージを持つ人も少なくないようです。

低用量ピルについて正しく知ることは、妊娠や出産、日々の体の状態を自らの意思で調整できる手助けになります。そこで、産婦人科医の柴田綾子先生に、低用量ピルとの上手な付き合い方を伺いました。

保険適用になる低用量ピルとは?

そもそもピルとは、月経や排卵の周期をコントロールしている女性ホルモン(※)が含まれたホルモン剤のことで、毎日1回服用し続けることで、高い避妊効果を得られます。副作用を抑えるために含まれるホルモン剤の量をできるだけ抑えたものを低用量ピルや超低用量ピルと呼びます。

低用量ピルは、目的に応じて大きく二つのタイプに分かれます。「一つは避妊目的のOC(Oral Contraceptives)。正しく服用すれば、ほぼ100%に近い避妊効果がありますが、保険適用ではなく、全額自己負担の自費になります。もう一つは、LEP(Low dose Estrogen Progestin)という低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬です。基本的にはOCと同じ成分の薬剤ですが、月経困難症の治療薬として使用され、保険適用となります」(柴田綾子先生・以下同)。

低用量ピルの使用が認められる月経困難症とは、生理中に起こる下腹部痛や腰の痛み、頭痛、抑うつなどの症状のこと。痛みの程度や感じ方はもちろん、不安、抑うつ、いらいらなど精神的な症状には個人差がありますので、つらいと思ったら産婦人科で相談してみるといいでしょう。「生理がこない」「生理周期がバラバラ」といった月経不順や「生理前にイライラが強い」などの月経前症候群も、低用量ピルで症状が改善しますが、厳密には保険適用にはなりません。

ちなみに、避妊を目的とする経口避妊薬(OC)は自費診療となり、1カ月分は2,000円~3,000円程度で施設やサービスによって異なります。月経困難症の人に処方される低用量プロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)は保険適用のため、1カ月分1,000~2,500円程度となります(低用量ピルの種類によってちがいます)。

日本のピル内服率はわずか2.9%。普及しない原因は?

国連の発行している『避妊法2019Contraceptive Use by Method 2019)』によると、日本のピル内服率は2.9%。一方、他国におけるピルの内服率は、フランス33.1%、カナダ28.5%、英国26.1%など、比べるまでもなく日本のピル内服率はまだまだ低いのが現状です。

日本で普及しないのはなぜなのか、柴田綾子先生に尋ねてみると、「まず、値段が高く毎日服用し続けるにはハードルが高いこと、医師による処方が必要なため病院を受診しなければならないことなどが考えられます。また、学校教育で生理の症状に対する対応を学ぶ機会が少ないことも原因の一つだと考えられます」

避妊だけじゃない、低用量ピルの効果

低用量ピルは、女性自身がとることのできる避妊方法の一つです。排卵を抑えることで得られる避妊効果は、正しく服用すれば約99.7%と報告されています。では、月経困難症に対する効果はどの程度あるのでしょう?

「低用量ピルには、排卵を抑えるために女性ホルモンの変動を抑える作用があります。正しく服用することで、月経痛の緩和や月経前の不快症状である月経前症候群(PMS)の改善、生理日のコントロールなどができます。

薬と相性が合うと、生理痛が軽くなるのはもちろん経血量も減って快適に過ごせるようになります。旅行や大事な試験、スポーツの大会など、ここぞというときに生理が当たらないように調整することも難しくありません。また、にきびや肌荒れが改善したと喜ぶ人もいらっしゃいます。生理痛が重いと悩んでいる人は、我慢せずに一度産婦人科で相談してみるといいでしょう」

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寳田真由美
編集者、ライター。大学卒業後、出版社や編集プロダクションに勤務。情報誌や女性誌、旅行誌などの編集を経て、2000年よりフリーランスで活動。現在は、主に女性のライフスタイルや健康、医療記事の編集・執筆などを行う。いま一番はまっているのは、愛犬と旅するためにはじめたキャンプ。