「低用量ピル」にまつわるウソ・ホント。よくある誤解や不安に婦人科医が回答。
フェムテック tvでは、働く世代の女性を中心とした500名を対象に低用量ピルに関する認識調査を2022年1月に実施。避妊薬のイメージが先行し、未だに誤解や偏見が多い低用量ピルですが、今回のアンケート結果では、意外にも低用量ピルの正しい理解が浸透していることが分かりました。しかし、中には「ピルを飲むと太りやすくなる」「誰でも服用できる」などのイメージがまだまだ強いことも明らかに。また、副作用や費用面の不安も大きいことが分かりました。本記事では、そんなリアルなアンケート結果をもとに、産婦人科医の池田裕美枝先生に低用量ピルの真偽を確認しました。
*本記事では、月経困難症治療薬として保険適用のあるピル(LEP)と、避妊薬として自費で処方されるピル(OC)を、合わせて「低用量ピル」と表記しています。
1999年にようやく日本で認可された低用量ピル。いまや世界でもっとも広く普及している避妊薬のひとつですが、女性ホルモンをコントロールする働きも期待できることから、月経痛やPMSなどの女性特有のお悩みにも有用な治療薬として、近年、需要が高まっています。
しかし、未だに「服用すると太りやすくなる」「将来の妊娠に影響する」といった様々な迷信が囁かれ、服用に抵抗や偏見を感じる人も少なくないのが現状です。そんな誤解を解き、正しい知識を持って活用するために、産婦人科医の池田裕美枝先生から低用量ピルの働きや注意点などを教えてもらいました。
INDEX
Q.1:低用量ピルは避妊効果しかない
先生の回答:1割の方が低用量ピルは避妊効果しかないと回答されていますが、正しくはNOです。低用量ピルは、PMS(月経前症候群)、ニキビのケア、月経痛・月経不順の緩和にも役立ち、避妊薬以外の効果を目的として処方されることがあります。
そのほかにも、月経日を入試や試合に重ならないように調整するなどの目的で使用されています。また、実は子宮内膜症、子宮体がんや卵巣がん、大腸がんのリスクを軽減することも分かっています。
Q.2:低用量ピルを飲むと太りやすくなる?
先生の回答:4割の方が低用量ピルを飲むと太りやすくなると回答されていますが、正しくはNO。つまり「ピルを飲む=太る」は誤解です。低用量ピルの服用と体重の増加に、因果関係はないということが研究で分かっています。
とはいえ、中にはピルに含まれる黄体ホルモンが身体に合わず、体がむくんだり食欲が増えたりして、体重が増える方もいます。そんな場合は、ピルの種類を変えることで解消することが多いです。
Q.3:低用量ピルを服用すると、将来妊娠しにくくなる
先生の回答:基本的に長期にわたって低用量ピルを服用していても、妊娠しにくくなるということはないため、NOが正解です。排卵が抑制されるのは、低用量ピルを服用している間だけです。
自然な月経は、服用を止めてから3ヵ月以内に90%で再開すると報告されています。なお、低用量ピルで排卵を止めている間は、卵巣と子宮を休ませているために、子宮内膜症や子宮筋腫といった不妊症の原因になる病気になりにくくなります。
Q.4:低用量ピルは辛い頭痛や吐き気などの副作用が心配
先生の回答:こちらの問いでは7割以上の方が副作用に不安を抱いていることが分かりました。実際に低用量ピルでは、飲み始めの数週間は、吐き気やむくみ、乳房の張りや不正出血などの副作用を生じることがあります。しかし、程度の差はありますが、1~2ヵ月服用を継続していると軽減することが多いです。
低用量ピルの種類は大きく分けて4つあり、もし軽減しない場合は、ホルモン組成や含有量の異なる他剤薬への変更で解決することも多くみられます。
ただし、頻度の低い重大な副作用としては、血栓症(血管が詰まってしまう病気)が挙げられます。10,000人に対して3~9人という少ない確率ではありますが、自分がハイリスクかどうか医師による診断を受けてから処方してもらうことが大切です。特に、キラッと光がみえるなどの前兆があってから偏頭痛がある方や、たばこを吸う方は注意が必要です。
Q.5:低用量ピルは飲んだその日から避妊効果が得られると思う
先生の回答:1割の方が、低用量ピルは即日に避妊効果が得られると回答されていますが、正しくはNOです。避妊目的で、低用量ピルを月経開始日前後から飲み始める場合、避妊効果を期待できるのは1週間飲んでから。これを7daysルールといいます。ピルが排卵を抑え、子宮内膜を妊娠しにくい状態にするのに、7日程かかります。服用してから1週間程度は、コンドームなどほかの避妊法を併用しましょう。
Q.6:低用量ピルの値段は高くて、服用しにくいイメージがある
先生の回答:避妊用の低用量ピルは自費で、1シート(1ヵ月分)約3,000円が相場です。アンケート結果では半数以上の方が費用面に対して高いというイメージがあるようですが、お薬によっては後発薬があり1シート1,000円弱になるものや、学割が利くクリニックもあります。また、月経困難症や子宮内膜症などの治療を目的にする場合は、保険適用となり3割負担になります。
(ちなみに筆者も、月経困難症の改善を目的として低用量ピルをずっと服用しています。私が行っているクリニックでは、再診時に3ヵ月分をまとめて処方してもらっており、合計2,680円(1ヵ月あたり約890円)です。費用面で不安に思うことがあればクリニックに問い合わせてみるのもおすすめです。)
Q.7:低用量ピルは誰でも処方してもらえる
先生の回答:YESと回答された方が半数以上いらっしゃいますが、低用量ピルは誰でも処方してもらえるお薬ではありません。血栓のリスクが高い方(35才以上で1日15本以上たばこを吸っている方、前兆のある偏頭痛をもっている方、重症の高血圧や糖尿病がある方など)や、乳がん患者さん、授乳中の方などには処方できません。しかし、低用量ピルが服用できなくても、月経を楽にしたり、避妊したりする方法はほかにもあります。ぜひ、かかりつけ医に相談してください。
正しく理解したうえで低用量ピルの服用を
避妊のほかにも、生理痛の軽減やPMSの緩和など、女性にうれしい効果がたくさんある低用量ピル。ただし、その働きや注意点をきちんと理解したうえで使用することが大切です。何か少しでも不安に思うことがあれば、まずは婦人科に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。
医師校正:池田裕美枝先生
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