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『フェムテック tv』でも人気の産婦人科医・池田裕美枝先生こと“ゆみえ先生”の新連載。今回は、SNSで集めた読者からのリアルな悩みにお答えします。

読者のお悩み：多嚢胞性卵巣症候群だと診断されました。多嚢胞性卵巣症候群は完治するのでしょうか？

ゆみえ先生の回答：病気ではないので完治もしません。排卵しにくい体質ではありますが、月経不順や無月経はピルで整えることも可能です。

排卵できずに卵巣に残ってしまう排卵障害

「多嚢胞性卵巣症候群とは、育った卵胞が卵巣にとどまってしまい、うまく排卵できない排卵障害のことを言います。正常に育った卵胞はやがて周囲を覆っている皮が弾けて排卵が起こるのですが、多嚢胞性卵巣症候群の女性は、その皮が固いことが多く、うまく排卵できずに卵巣に残ってしまうのです。日本には多嚢胞性症候群と診断される方がとても多く、決して珍しい症状ではありません」（ゆみえ先生・以下同）

―排卵されないと言うことは、月経も起こらないということですか？

「今回のテーマとはずれてしまうので、詳細はまた別の機会にお伝えできればと思いますが、排卵と性器出血（月経）は別物なんです。ですから、多嚢胞性卵巣症候群の女性のなかには、無月経の人もいれば、月経が頻繁に起こる人もいます。一般的には、月経不順が気になり婦人科やレディースニックを受診し、多嚢胞性卵巣症候群だと診断される女性が多いですね」

多嚢胞性卵巣症候群は病気じゃない!?

―多嚢胞性卵巣症候群と診断された場合、どんな治療が行われるのですか？ また相談者の方が心配されているように、完治はするのでしょうか？

「多嚢胞性卵巣症候群は、そもそも病気ではありません。その人の体質の名称だとイメージしてもらうのが近いでしょうか？ たとえば『乾燥肌だ』とか『太りやすい体質だ』などと同じことで、診断されたら『自分は人より少し排卵しにくい体質なのだ』と思ってください。病気ではないので、完治という言葉は適しません。でもなかには、そのうち体質が変わってしっかり排卵するようになる方もいます」

―病気じゃないとは、知りませんでした！　

「多嚢胞性卵巣症候群によってニキビができやすかったり、太りやすかったり、月経不順だったりする症状が、日常生活で特に気にならない程度であれば、治療をする必要もありません。

ただ、『月経がいつ来るのか分からずに困っている』とか、『そのせいでニキビができやすいのだったとしたら治したい』とおっしゃる患者さんには、ピルを処方してホルモンバランス整えることをおすすめしています」

不妊症のリスクは？

―「排卵しにくい体質」と聞くと、「妊娠できるのかな？」と心配になる女性も多いかと思うのですが、その点はどうなのでしょう？

「たしかに多嚢胞性卵巣症候群の女性は、月によって排卵が起こったり、起こらなかったりするので、排卵日を予測するのが困難です。そのために、妊娠のタイミングを計ることが難しくはありますが、だからと言って早期に治療をしないと不妊症になる、というわけでもないのです。妊娠を希望する時がきたら、排卵誘発剤を使って排卵を促す方法もあるので、自分の体質を知っておくことは大切ですが、心配しすぎることはないと思います」

―月経不順で日常生活に差し障りがなければ、急いで多嚢胞性卵巣症候群を治療する必要もないのですね。

「そうですね。ただ、多嚢胞性卵巣症候群には個人差があって、まったく排卵できない重症な方も、まれにいらっしゃいます。また、体内のホルモンバランスが大きく崩れて糖尿病になりかけていたり、子宮内膜に異変をきたしたりする場合には治療の必要も出てきます。薬でホルモンバランスを整えることで、そういったリスクは軽減できますので、月経不順や無月経があるかたはぜひ、婦人科やレディースクリニックできちんと診てもらってください」

―他にも注意すべきことはありますか？

「多嚢胞性卵巣症候群だと分かったら、避妊はきちんとした方がいいです。まれに、『自分は妊娠しにくい体質だから……』と、避妊を疎かにしがちな方がいらっしゃいますが、いつ排卵が起こるか分からないということは、逆に、いつ妊娠してもおかしくないのです。月経サイクルが規則的な方以上に気を付ける必要があることも覚えておいてください」

池田裕美枝先生

いけだ・ゆみえ　京都大学医学部卒業。「市立舞鶴市民病院」「洛和会音羽病院」にて総合内科研修後、産婦人科に転向。現在は「二宮レディースクリニック」での産婦人科外来、「神戸市立医療センター中央市民病院」の女性外来、「京都大学医学部附属病院」の女性ヘルスケア外来を担当。また、SRHR（セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス＆ライツ）の勉強会や啓もう活動を行う研究会「 京都大学 リプロダクティブ・ヘルス＆ライツ ライトユニット」の代表も務める。

小嶋美樹
編集者、ライター、ディレクター。大学卒業後、出版社に勤務し、女性誌や実用書・ビジネス書の編集、ＷＥＢディレクターなどを経て、２０２０年からフリーランスに。現在は主にインタビュー記事や女性のライフスタイル・子供の教育系記事の執筆、韓国エンターテインメント記事の編集・執筆など行う。趣味は旅行で、今一番欲しいものは子供たちと日本中を旅して回れるキャンピングカー。