
「セックスを自分の意思で行ってる?」……NOと言えないあなたを守る『性的同意』とは?
フェムテック tvでも人気の産婦人科医池田裕美枝先生こと“ゆみえ先生”の新連載がスタート! 第1回目は、世界的な『#MeToo運動』を発端に今、日本でも議論が高まっている『性的同意』がテーマです。
あなたは大好きな人とのセックスを自分の意思でできていますか? 「パートナーに望まれたから」「なんとなく成り行きで」、もしくは「避妊なしの性行為は嫌だったけれど、断れず」なんて気持ちから性行為に及んだ経験はありませんか? あなたの心と体を守り、誰しもが自分らしく生きるためにとても重要な『性的同意』に関して、ゆみえ先生と考えていきます。
恋人同士や夫婦間にも起こる性暴力
「キスやセックスなどの性的な行為や性的な言葉を発する際には、事前にお互いの意思をきちんと確認すべきだ、というのが日本でも議論が高まっている性的同意です。たとえそれが恋人同士や夫婦間であっても、相手が望まぬことを強要した場合には性暴力となり、大切な相手を傷付けることになるのです」(ゆみえ先生、以下同)
―性的同意に関しては、最近では大学生の間でも活発に議論が起こっていますよね。
「そうですね。悲しいことに、『雰囲気に流されて~』『明確な拒絶の言葉がなかったので~』と、まったく悪びれない加害者がいるのも事実です。それを防ぐためにも、明確な同意が大切なのです」
―ただ、きちんと線引きをしようとすると、一筋縄ではいかない、難しい問題でもあります。
「『好きでもない相手に無理やり性的な行為を強要された』という事例もありますが、それは議論の余地さえない論外。そうではなく、たとえば相手に好意を抱いてはいるけれど、まだ性的な行為に進む気持ちにはなっていなかった女性がいるとします。でも、相手が好きだからこそ、それを望むパートナーを拒絶できず、自分を押し殺して受け入れてしまうケースも多々みられるのです」
―その行為によって、心に大きなダメージを負ってしまうこともあります。それを防ぐためには、具体的にどうすれば良いのでしょう?
「嫌だ」と面と向かって言えない人が3割?
「そもそも性的同意の大前提として、“自分の体は自分のもの”とはっきり自覚できている人が、どれほどいるでしょう? 『セックスをする、しない』『避妊をする、しない』などを選択する際に、誰かの意思や周りからの圧力ではなく自分自身の意思で決める、といった当たり前のことができていない人が、意外にも多いように感じるのです」
―先生が活動しているSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ※)の考えにも通じますね。たしかに、パートナーに求められるがまま、なんとなく受け入れている女性も少なくないように思います。
「特に日本女性は、欧米諸国にくらべ、体の自己決定権や拒絶の意思表示が苦手な人が多いとも言われています。私が以前、中学校で性教育の授業を行った際に、生徒たちに『相手に言いにくいことをどうやって伝えていますか?』とのアンケートをとったことがありました。その結果、約3割の子が『言いにくいことは相手には伝えない』と答えたのです」
―そんなにも多くの子が、そもそも自分の意思を相手に伝えないとは驚きです。
「『面と向かって伝える』『スマホで伝える』『伝えない』がそれぞれ3割ぐらいに分かれたのですが、たとえばキスやセックスをするとき、自分の気持ちは目の前にいる相手に面と向かって言うしかありませんよね。この結果を踏まえ、その後の授業では、『嫌だと思っていても、言葉に出して言えない子もたくさんいることを忘れないで』と、生徒たちに伝えるようになりました」
―何も言わない相手にも「本当は嫌なんじゃない?」と確認をとるのは、性的同意のひとつの手段かもしれませんね。
「性的な行為に限らず、相手のことを大事に思うのだったら、『実は相手は嫌な気持ちを言えずに、我慢しているのかもしれない』という想像力を忘れないで欲しいのです。そうすれば、不意に相手を傷付けることも防げるかもしれません」
―嫌な気持ちを言葉に出すのが苦手な相手には、その一言が大きな優しさになりますね。
セックスにおける男女の脳の違い
「セックスをしたいという欲求から実際に行為に至るまでの体や脳の反応が、男性と女性とでは大きく違うことも、男女間での『性認識のすれ違い』が起こってしまう一因であるように思います。
男性は、性的な行為に対しての感情と体の反応が直結している人が多いのに対して、女性は精神面から入っていく人が多い。女性は、『この人のことが好き』『一緒にいると安心する』という感情から始まり、体を刺激されるうちに徐々にセックスへの欲求も高まっていく、という人が少なくないのです」
―たしかに刺激がスイッチになることもありますよね。
「その脳の違いが、悪い方に利用されている気がするのです。女性の場合、最初は気持ちがのっていなくても、体を刺激されるうちに高揚してくる場合もあるので、『嫌よ嫌よも好きの内』だと信じ込んでいる男性が非常に多いのかもしれません」
―でも「嫌よ嫌よが本心だった」ということも往々にしてありますもんね。だからこそ、雰囲気に流されるのではなく、「本当に嫌じゃない?」と、きちんと相手の意思を確認することが大切なのでしょう。
「性的同意を表明できるかどうかは、相手と対等な関係を築けているかどうか、ということに直結しています。“自分の体は自分のもの”と自己決定ができ、誰しもが自分らしく生きていきためにも、とても重要なことなのです」
―そのあたり、次回も詳しく教えてください!
※『SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)』とは?
自分の体や人生は自分自身のもので、誰かに強制されたり、捧げるものではありません。性の多様性や正しい知識を得ることで「どんな人を好きになるか」「子どもを持つか、持たないのか」「どんな人生を送るのか」などを自分の意思で自由に決め、人生を選択しよう、という理念のことを言います。
池田 裕美枝先生
いけだ・ゆみえ 京都大学医学部卒業。「市立舞鶴市民病院」「洛和会音羽病院」にて総合内科研修後、産婦人科に転向。現在は「二宮レディースクリニック」での産婦人科外来、「神戸市立医療センター中央市民病院」の女性外来、「京都大学医学部附属病院」の女性ヘルスケア外来を担当。また、SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)の勉強会や啓もう活動を行う、京都大学学際融合教育研究推進センター主催の「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ」のライトユニット長も務める。
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[…] 「前回の記事のなかでも、自分の体を大切にするためには、自己決定権を自分自身で持つことが重要だとお伝えしました。たとえば、パートナーの望みを叶えるためのセックスをしたり、避妊なしの性行為を我慢しなくてもいい。自分の体は誰のものでもない、あなた自身のものなのです。 […]
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