PMS/生理 by 丸山彩

数字で見るPMSの経済損失。女性が働きやすいと経済は活性化!

みなさん、「健康経営」を知っていますか? 「健康経営」とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組み実践すること。従業員へ健康投資を行うことは、モチベーションアップや業績の向上などにもつながると期待されている経営手法のひとつです。

「健康経営」は女性の健康を重要視

現在、国が推奨している取り組みのひとつ、「健康経営」。優れた健康経営をしている企業には、「健康経営銘柄」を顕彰したり、「健康経営優良法人認定制度」を設けるなど、社会的に評価を受けられる環境の整備も進んでいます。
そんな中、平成31年3月、経済産業省は「健康経営における女性の健康の取り組みについて」という女性の健康にフォーカスしたデータが発表されました。
「健康経営」に取り組む中で、関心が高いものを聞いた結果がこちら。

「健康経営」に取り組む中で、関心が高いものを聞いた結果がこちら

出典:経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて

一番多かったのが「女性特有の健康問題対策」。半数を越える56%という関心の高さでした。
これまで、健康経営を進める中でメタボ対策が重要視されてきましたが、ここにきて、健康経営の質を高めるには、“女性の健康に力を入れていこう!”という流れになってきています。

4,911億円ってなんの数字か、わかる?

バイエルン薬品株式会社と東京大学大学院医学系研究科の大須賀穣教授らのグループによる全国の女性約2万人を対象にしたインターネット調査から、女性特有の月経関連症状による1年間の社会経済的負担を試算すると……なんと、その額6,828億円!

女性特有の月経関連症状による1年間の社会経済的負担を試算

出典:経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて

そして、月経関連症状による1年間の労働損失、4,911億円!!
といことは、月経関連症状への対応を整えるれば、労働損失を大幅に減らせる可能性があるということです。

できる女性は、健康意識が高い!

多くの女性が社会で活躍している現在、日本の全従業員の約44%は女性。中でも、健康への意識が高い女性というのは、仕事もできるというデータもあります。

経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」

出典:経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて

きちんとカラダと向き合うことのできる人ほど、仕事でも高いパフォーマンスを見せられるのです。さらに、こんなデータも。

出典:日本医療政策機構「働く女性の健康増進に関する調査2018」

出典:日本医療政策機構 「働く女性の健康増進に関する調査2018

健康意識の高い女性というのは、月経関連症状がある中でも、仕事のパフォーマンスが高いというのです。ということは、健康経営により、みんなが女性特有の月経関連症状への知識を高め、働きやすい環境になることで、さらに女性たちは大きな活躍を見せてくれることが想像できますよね。

働く女性のリアルなPMS

このように、女性が働きやすい環境を作ろうと進んでいる「健康経営」ですが、本格的にスタートしたのはここ数年。まだまだ改善すべき課題も多いようです。

「ルナルナ」による、生理痛や PMS の仕事への影響とピルの服薬に関するアンケート

「ルナルナ」による、生理痛や PMS の仕事への影響とピルの服薬に関するアンケート(調査実施期間:令和 2 年 1 月 10 日(金)~14 日(火) 調査対象:10~50 代以上の働く女性 2,094 名)

 

「健康経営」で取り上げられている女性特有の月経関連症状の中でも、やはり多くの人が悩まされているのが生理痛やPMS。実際、生理痛やPMSの症状が仕事に影響があると感じている女性は、約87%。

ホルモンのバランス変化で起こる月経前症候群(PMS)で仕事や昇進をあきらめる女性もいる

ホルモンのバランス変化で起こる月経前症候群(PMS)で仕事や昇進をあきらめる女性もいる(ホルモンケア推進プロジェクト調べ:35~59歳の女性500人対象)

さらにはPMSが、休暇をはじめ、昇進・退社という社会人にとっての大きな節目にも関わっているという結果もあります。
PMSにより、昇進を辞退、もしくは辞退を考えたことのある女性が60%以上。PMSにより、仕事を休むことがある女性が20%以上、さらには仕事を辞めたことがある女性が6.8%もいるのです。
毎月のことだからと我慢している人もいるかもしれませんが、時には女性の人生にまでも影響してくるPMS。社会全体で、きちんとした対応力を身につける必要があることは、間違いありません。

生理休暇は、約100年前のパワーウーマンたちの名残!?

日本には、労働基準法により、生理日の就業が著しく困難な女性が取得可能な休暇、生理休暇があります。実は生理休暇には、こんなストーリーがあります。最初に女性労働者が月経時の休暇を権利要求として声をあげたのは、第二次世界大戦前の1917年。戦後に法定化しようとしたところ、男女平等の観点から女性の特別扱いにあたるとGHQからの否定を受けました。が、女性活動家たちの熱心な運動により、GHQの反対を押し切り規定されたのです。まさに、日本の働くパワーウーマンたちが作った歴史のひとつと言えるでしょう。

しかし、昭和40年代には4人に1人が生理休暇を取得していたのですが、現在ではわずか0.9%。100人に1人も取得することのない休暇となっています。
取得低下の背景には、男女雇用機会均等法の成立や、女性の残業や深夜労働に対する制限がなくなったことが影響していると考えられます。様々な変化と共に、女性を守っている制度についても、見直すタイミングがきていると考えるべきなのかもしれません。

ちなみに、現在の生理休暇は生理日に限ったことではなく、PMSの時期にも取得可能な制度です。取得日数に制限もありません。ただ、有給休暇となるかは、会社によって異なるので、取得を考える際には、きちんと確認してくださいね。
出典:田口亜紗著『生理休暇の誕生』(青弓社)

 

ウィメンズ・ヘルス・アクション DATA BOOK 2019 ~PMS・うつ病・更年期・がん 4大お悩みを考える~

出典:ウィメンズ・ヘルス・アクション実行委員会「ウィメンズ・ヘルス・アクション DATA BOOK 2019 ~PMS・うつ病・更年期・がん 4大お悩みを考える~

PMSをはじめとする女性の月経関連症状に寄りそう「健康経営」が進んでいますが、これは一見、働く世代の女性だけに向けたものに感じます。ですが、実は、働く世代の女性たちが健康でいることは、健康な出産を実現することで「次世代への健康投資」にも繋がってくるのです。女性が働きやすい環境だと経済が活性化し、少子化対策にも繋がる。つまりは明るい未来のためにとても大切なことなのです。

経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて」

出典:経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組みについて

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丸山彩
東京都出身。某出版社での雑誌編集を経て、フリーランスの編集・ライターに。美容、女性のライフスタイルをテーマにしたカタログ・広告・webなどの制作を多く手掛ける。