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by 保住ひろえ

『卵子凍結』のリスクやメリットをちゃんと知ろう|杉山医師にあれこれ聞いてみた-前編-

未来の選択肢を残す手段として世界中で注目を集めている『卵子凍結』。著名人やスポーツ選手がその挑戦を公表したり、海外のIT企業が福利厚生のひとつとして導入したりと徐々に身近に。欧米では“ソーシャル・エッグ・フリージング”とも呼ばれ、若いうちに卵子を凍結保存する女性も増えているようです。そもそも『卵子凍結』とは、どんな技術なのでしょうか?

不妊治療の名医としても知られる杉山力一医師に、『卵子凍結』についてお話を聞きました。

『卵子凍結』って、どんな技術?

そもそも『卵子凍結』とは、将来の体外受精を見据えて採卵した卵子を受精させる前に凍結保存する技術のこと。生きているこの時間をストップすることはできませんが、卵子を凍結保存しておけば、いまの年齢の卵子を温存することができるというわけです。

もともとは、抗がん剤治療や放射線療法で卵巣機能の低下が予想される若年女性患者が、将来の妊娠・出産の可能性を残すための医学的適応として用いられてきました。

未来の選択肢として注目される『卵子凍結』

この技術が一般に認知されはじめたのは、いまから7~8年前。

2012年に米国生殖医学会は、凍結融解卵子由来で生まれた子供に染色体異常、先天異常、および発育障害のリスクが増大することはないという見解を発表。そして2013年には、日本生殖医学会がガイドラインを正式決定。健康な未婚女性が将来の妊娠・出産に備えた社会的適応としての『卵子凍結』を行うことが認められました。

ただし『卵子凍結』をしたからといって、将来の妊娠・出産を100%保証するものではないことも事実。それゆえに、まずは知識や理解を深めることが大切です。

卵子の老化は自然の摂理

『卵子凍結』についてインターネットで情報収集してみると、年齢を重ねるにつれて卵子が老化するという、なんだか響きの重いキーワードがちらほら。この卵子の老化について、杉山医師は次のように話します。

「卵子の老化は自然の摂理なので止められません。妊娠率と生産率は年齢とともに右肩下がりになり、流産率は年齢とともに右肩上がりになることが分かっています。もっている染色体の強さの差が関係していると考えられていますが、詳細なメカニズムはいまのところ分かっていません。生理がはじまった年齢や遺伝子も人それぞれ違うので、老化のスピードにも個人差があります」

肌や髪と同様に、卵子も年齢を重ねるにつれて徐々に老化していくのだとか。

なるべく若い卵子のほうがゴールに結びつきやすい

年齢を重ねるにつれて妊娠・出産のリスクやハードルが高まることは多くの人に知られていますが、『卵子凍結』の治療実績も年齢を重ねるにつれて下がることが分かっています。

「若いうちに卵子を凍結保存しておくことを推奨する専門家もいたり、それよりも早く婚活しなさいという声もあったり、いろいろな意見があると思います。しかし、将来的に凍結した卵子を使用して出産することがゴールだった場合には、なるべく若い卵子がたくさんないとゴールに結びつきにくいのが事実です」

凍結した卵子の生存率は90%以上

体外受精で『卵子凍結』を使用する際は、凍結保存しておいた卵子(成熟卵子)を融解して精子と授精させます。その融解後の卵子の生存率はどのくらいなのかを杉山医師に聞くと、

「卵子融解後の生存率は90%を超えます。いまの時代は医療技術が優れているので、凍結・融解によるダメージはほとんどないと考えられています。しかし、出産までいたる可能性はもう少し低くなります。採取した卵子を融解したあとに精子と授精させて、受精卵として成長する過程で、途中で成長がとまる胚もあります。その要因は分かっていませんが、何らかのストレスだと考えられます」

つまり、採取できた卵子全てが凍結、融解、授精、移植に使えるわけではないことも理解しておく必要があるといえそうです。

妊娠を希望する人は必ず『AMH検査』を

『卵子凍結』を検討するときにもうひとつ知っておきたいのが、卵子の残存数について。

女性は出生したときに、卵子の元である卵母細胞を100~200万個もって生まれ、そのあとあらたに補充されることはありません。月経がはじまる思春期から、およそひと月に1個の卵子が排卵されていますが、その過程で約1000個の卵母細胞を消費するとされています。

そこで、卵巣内にどれくらいの卵子があるかを把握できるのが『AMH検査』です。

「将来的に妊娠を希望するのであれば、ご自分のAMH値は絶対に知っておいたほうがいいです。結果が怖いという方もいますが、健康診断と同じ。AMH検査をしておくことで、今後のライフプランの選択に活かせると思います」と杉山医師は話します。

『卵子凍結』=保険という考え方

「卵子凍結は、妊娠の可能性を保障するもので、妊娠の保障はありません。理想は凍結した卵子を使わずに赤ちゃんを授かることだと思います。ですから私たちのクリニックでは、卵子凍結は保険なので、妊娠を望むならなるべく早く結婚して早く妊娠してくださいねと伝えています。ただ、妊娠・出産のリスクが高まる年齢になったときに、その保険がある人とない人では大きな差があると思います」

『卵子凍結』を選択する・しないは個人のジャッジですが、保険があって悪いことはないと話す杉山医師。

後編では、『卵子凍結』の手順や費用、痛みなどについてお話しをお伺いしました。

杉山力一氏

杉山産婦人科 院長

東京医科大学卒業後、一貫して生殖医療に従事、セントマザー産婦人科医院で体外受精の基礎を学ぶ。2001年杉山レディスクリニック、2007年杉山産婦人科世田谷、2011年杉山産婦人科丸の内、2018年杉山産婦人科新宿を開院。医療法人社団杉四会・杉一会理事長。

http://www.sugiyama.or.jp

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