フェムテック/ケア by 保住ひろえ

今、知っておきたい『卵子凍結』のリスクやメリット

凍結した卵子の生存率は90%以上

体外受精で『卵子凍結』を使用する際は、凍結保存しておいた卵子(成熟卵子)を融解して精子と授精させます。その融解後の卵子の生存率はどのくらいなのかを杉山医師に聞くと、

「卵子融解後の生存率は90%を超えます。いまの時代は医療技術が優れているので、凍結・融解によるダメージはほとんどないと考えられています。しかし、出産までいたる可能性はもう少し低くなります。採取した卵子を融解したあとに精子と授精させて、受精卵として成長する過程で、途中で成長がとまる胚もあります。その要因は分かっていませんが、何らかのストレスだと考えられます」

つまり、採取できた卵子全てが凍結、融解、授精、移植に使えるわけではないことも理解しておく必要があるといえそうです。

妊娠を希望する人は必ず『AMH検査』を

『卵子凍結』を検討するときにもうひとつ知っておきたいのが、卵子の残存数について。

女性は出生したときに、卵子の元である卵母細胞を100~200万個もって生まれ、そのあとあらたに補充されることはありません。月経がはじまる思春期から、およそひと月に1個の卵子が排卵されていますが、その過程で約1000個の卵母細胞を消費するとされています。

そこで、卵巣内にどれくらいの卵子があるかを把握できるのが『AMH検査』です。

「将来的に妊娠を希望するのであれば、ご自分のAMH値は絶対に知っておいたほうがいいです。結果が怖いという方もいますが、健康診断と同じ。AMH検査をしておくことで、今後のライフプランの選択に活かせると思います」と杉山医師は話します。

『卵子凍結』=保険という考え方

「卵子凍結は、妊娠の可能性を保障するもので、妊娠の保障はありません。理想は凍結した卵子を使わずに赤ちゃんを授かることだと思います。ですから私たちのクリニックでは、卵子凍結は保険なので、妊娠を望むならなるべく早く結婚して早く妊娠してくださいねと伝えています。ただ、妊娠・出産のリスクが高まる年齢になったときに、その保険がある人とない人では大きな差があると思います」

『卵子凍結』を選択する・しないは個人のジャッジですが、保険があって悪いことはないと話す杉山医師。

後編では、『卵子凍結』の手順や費用、痛みなどについてお話しをお伺いしました。

『卵子凍結』の手順や費用は? 痛みはあるの?

杉山力一氏

すぎやま・りきかず 東京医科大学卒業後、一貫して生殖医療に従事、セントマザー産婦人科医院で体外受精の基礎を学ぶ。2001年杉山レディスクリニック、2007年杉山産婦人科世田谷、2011年杉山産婦人科丸の内、2018年杉山産婦人科新宿を開院。医療法人社団杉四会・杉一会理事長。

http://www.sugiyama.or.jp

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保住ひろえ
1993年生まれ。ファッション誌のエディターを務め、美容系IT会社のコンテンツ制作部・ディレクター兼ライターに。ビューティー&ヘルスケア系のテーマを中心に執筆中。