痛み止めを飲むタイミングは?意外と知らない生理のこと〈医師監修〉
正常な生理周期は?痛み止めは飲むタイミングは?そもそも痛みが起きるたびに飲んでもいいの?など、毎月、訪れる生理について、気になることだけではなく、意外と知らないこともあるかも。そこで、えんみちゃんの愛称で知られる産婦人科医、遠見才希子先生に生理の疑問について教えていただきました。
生理の始まりから生理周期
「初経を迎える平均年齢がおよそ12歳。そこから1~2年かけて排卵を確立していくので、初経を迎えてから生理(月経)が半年間こないこともあるくらい、その間の生理は不順です。そして、排卵が確立されてから生理痛が出始めます。そのため、今よりも、中学生、高校生の頃に生理痛が強かったという人もいると思います。
成人してからも生理の症状には個人差があります。生理周期といえば28日というイメージが強いからか、28日周期でないと生理不順だと思っている方もいますが、そうではありません。正常な生理周期は24~38日と、幅があるため、自分の生理周期を知っておくことが大切です。自分の生理周期を知ったうえで、短くなったり、長くなったりしていないかを把握してみてください」
毎月、生理があることがいいとは限らない?
毎月、周期通りに生理がくると安心しますが、気を付けておきたいこともあります。
「現代女性は、生涯450回くらい生理があると言われています。妊娠・出産回数が多く、生涯で50回という時代もあったと言われており、個人差はあるものの現代女性には生理に関する負担の増加が考えられます。
生理は基本的に、毎月あり、子宮内膜がはがれることで腟から体外に出ていきます。しかし、子宮内膜の一部が逆流して卵管や卵巣、骨盤の中に入ってしまい,それが子宮内膜症の原因になるという説があります。子宮内膜症は生理の回数が蓄積されるほど進行していきます。
そして、排卵による刺激の蓄積などによって、将来的に卵巣ガンにかかわってくるとも言われています。生理がある女性は誰もが、子宮内膜症、卵巣ガンなど、女性特有の病気のリスクを抱えていることになります。
こういう話を聞くと驚いてしまうかもしれませんが、知識として得ておくことは大切です。自分の身体に起きるかもしれないことを知っておくことで、生理をコントロールするために低用量ピルや子宮内避妊システム(ミレーナ)を取り入れてようかなと、自分の身体に関する選択を考えるきっかけになりますよね」
慢性的な貧血は要注意!
例えば、経血量が多い過多月経の場合、医学的には1回の生理周期で150mL以上という目安の数字はありますが、自分で測るわけではないのでわかりにくいですよね。なので、下記のようなことが判断材料になります」
☐レバーのような塊が続いている
☐多い日用のナプキンが1~2時間でいっぱいになる
☐おむつを使いたいと思うくらいの経血量がある
☐健康診断などで、貧血を指摘されたことがある
「生理による慢性的な貧血に身体が慣れてしまって症状を自覚していないという人もいますが、生理がある年齢で、健康診断で貧血を指摘された場合は、生理が原因になっていることが多いです。立ちくらみ起こすなど、貧血っぽくなるのがお決まりという人も、経血の量が多い可能性があるため、産婦人科の受診をおすすめします」
経血量が多くなる原因として子宮筋腫や子宮内膜症の可能性もあります。いつものことだからと、そのままにするのではなく、一度受診をしてみましょう。
痛み止めはタイミングが重要!
生理痛は我慢するもの、痛み止めは耐性ができるから飲みすぎるのはダメと、言われたことがある人もいるのではないでしょうか。遠見先生は、「生理痛があるときは、痛みを我慢せず、痛み止めを飲んでください」と話してくれました。
「痛み止めを飲むときに意識してほしいのは、飲むタイミングです。
痛み止めの作用は、起きている痛みを抑えるのではなく、痛みが作られる過程をブロックすることです。痛くなってからではなく、痛くなりそうだなと思ったら飲んでください。もしくは、毎回、生理2日目に痛みが出るという人は、生理が始まった1日目から飲んでも問題ありません。
そして、パッケージに書かれている用法、用量の範疇であれば、薬の効果が切れたと感じる前に飲んでも、飲みすぎにはなりません。
飲むタイミングを意識することで、痛みの感じ方、生理期間の快適さは変わってくると思います」
ただし、あくまでも対症療法にすぎないので、痛みが取れたからといって、子宮や卵巣に問題がないと言い切れるわけではありません。生理の悩みなど心配なことがあればいつでも産婦人科を受診してください。また、セックスの経験がある20歳以上の女性は定期的な子宮頸がん検診の対象になります。
身体の自己決定をするための知識を得る
「なによりも大切なのは自分の身体は自分のものだということです。
中学校、高校の性教育の講演で,自分の身体は誰のものかを聞くと、自分のものだよと生徒たちは答えます。当たり前のことなのに、普段なかなか意識する機会がなかったり、生理や性に関することは個人の経験談で話されることが多く、勝手に決めつけられてしまったりすることもあるかもしれません。自分の身体は自分のものだから、自分の身体のことは自分で決めていいんです。
一人ひとりのセクシャル・リプロダクティブ・ヘルス・アンド・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)が尊重されるためには、生理をはじめ、PMS、セクシャルウェルネスなどの知識が得られ、個人だけでなく社会全体で問題が共有され、性教育や社会のシステムが整備されることも必要だと感じています」
遠見才希子氏
えんみちゃんの愛称で知られる産婦人科医。大学時代から全国の中学校、高校などで性教育の講演を行っている。子どもと一緒に性教育について考える絵本『だいじ だいじ どーこだ?』(大泉書店)も話題。
twitter@emmi__chan
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