フェムコト 連載 by 橋本範子

「ヴィーガンが100%いいとは思っていない」それでも自分や自分以外の存在のため、環境のため、善意を持って動く|菜食コンサルタント・山﨑由華さん

人間本来のゆらぎが無視されず許される社会を願う

フェムテックtv:自分の体や心に敏感になり労っている印象の山﨑さんですが、フェムケアで注目しているトピックスはありますか?

山﨑さん:最近おもしろいなと思ったのは、腟トレです。昔の日本人女性は、腟を締めて経血を止めておき、トイレに行ったときだけ緩めて出すと聞いて。歩いているとき、電車に乗っているとき、できるだけ腟を締める意識を持つようになりました。

それから月経カップは大学時代から、かれこれ7年くらい使っています。カナダではサステナブル系のショップでも、結構売っているんですよね。最初はうまく装着できないと漏れてきてしまうこともありましたが、いまは生理1日目や4〜5日目であれば、月経カップだけを使用しています。経血量が多い日は、布ナプキンもつけることはありますね。菜食を始めたことをきっかけに、今までの当たり前を疑い、物事を自分の軸で意識的に“選択をする”ことに意識が向くようになりました。

フェムテックtv:菜食生活はもちろん、カナダでの生活も意識の変化に繋がっていますよね。

山﨑さん:カナダ人は日本人に近いところもありますが、基本的に性に対してはオープンですね。ロングウィークエンドの前になるとみんな実家に戻るので「楽しんできてね」とギフトをもらうことがあったのですが、お菓子と一緒にコンドームが入っているんです。「安全に楽しんでね」って感じですごくナチュラル。セックストイビンゴという、ビンゴで当たったらセックストイがもらえるゲームもあります。性というものが、やましいものや隠さなきゃいけないものではないんですよね。最初はびっくりしましたが(笑)。

フェムテックtv:国内外を問わず生活してきた山﨑さんですが、今後どんなライフプランを描いていますか?

山﨑さん:それぞれが選択したいことが尊重される、優しい社会になったらうれしいです。私の専門分野から言うと、菜食がデフォルトな日本社会になったらいいなと思っていて。日本の栄養教育の中で学べる機会があったり、学校給食が菜食になったり。決して社会を変える人になりたいわけではなく、そういう社会になったらいいなと思い、いま動いています。

個人的なことで言えば、いずれは家庭を築きたい。そのために30歳までにもう少し土台を固めて収入を得て、家庭に割ける時間を確保できるようにしたいと思っています。新型コロナウイルスの感染拡大を経て、どんなタイミングで何があるかわからない。そう痛感したので、いつ何がきても大丈夫なように事前準備をしています。

おばあちゃんになっても元気に楽しく働いていたい。キャリアの道は長いと思っているので、短期間で何かを達成したい、成長したいというよりは、持続可能なバランスを保って仕事することを目標にしています。

「父がアウトドア好きなことと、中学生のときまでボーイスカウトに入っていたことが相まって、いまも時々家族でキャンプに出かけます。自然の中で作るご飯は格別!」

フェムテックtv:ありがとうございます! では最後に、山﨑さんにとってのウェルビーイングな社会とは?

山﨑さん:女性の社会進出が当たり前になり、男性社会に飛び込む働き方も増えてきました。ただ女性は、どんなに健康的でも、基本的には月1回は生理があって出血する期間がある。そんな中で一定に働くのは、すごく難しいですよね。資本主義社会の中で、生産性や効率性が重視されているが故に、人間本来が持っているゆらぎが無視されているし、ゆらぎをあらわにすることを否定されているというか、あまり許されていないと感じます。

女性は明らかに波のある生き物。その波が許容されて、男女の差も認識されて、さらに個人の中でも波がある。社会の生産性よりも個人の健康が優先される社会。人間本来のゆらぎが許されることが、ウェルビーイングな社会だと思います。

photographer Shiori Ota

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橋本範子
女性誌を中心に手がける編集・ライター。趣味は深夜ラジオを聴くこと。小型船舶2級所持。