フェムコト PMS/生理 連載 by 小嶋美樹

「大切なものは人それぞれ。“こうあるべき”の思い込みを捨て、多用な働き方を実現したい」株式会社SHIBUYA109エンタテイメント 代表取締役社長 石川あゆみさん|フェムコト インタビューvol.9 前編

『フェムテックtv』と、未来を作るSDGsマガジン『ソトコト』が新たに女性のウェルビーイング向上を目的として立ち上げた、対談コンテンツ『フェムコト』。第9回目は、「SHIBUYA109」の運営をはじめ、若者や地域を応援するさまざまな取り組みを行っている「株式会社SHIBUYA109エンタテイメント」代表取締役社長の石川あゆみさんにお話を伺っていきます。

〈Profile〉

株式会社SHIBUYA109 エンタテイメント 代表取締役社長 石川あゆみさん
愛知県豊田市生まれ。名古屋大学卒業後、通信事業や出版系企業などを経て、2008年に東急電鉄(現、東急株式会社)に入社。2021年4月より現職。2011年に長男を、2015年に次男を出産された二児の母でもある。

 

ー石川さんの3つのルールー
RULE1. 仕事もプライベートも同じように大事にする
RULE2. 家事・育児で「他の人の力も借りる」ことに罪悪感を抱かない
RULE3. 後輩たちに「自分にもできそうだ」と思われる働き方をする

女の子の困りごとに寄り添える施設でありたい

フェムテック tv:今年38日の国際女性デーに、『#PERIOD_ACTION(ピリオド アクション)ウチらの声を、未来へ。』というイベントをSHIBUYA109渋谷店(以下、SHIBUYA109)で行ったそうですね。「生理はもうタブーではない」をテーマに開催するに至った経緯を教えてください。

石川さん: 私たちは、SHIBUYA109お買い物を楽しむ場というだけではなく若者たちの夢や願いを叶える場であって欲しいと、常日頃から思っています。「そのためには、若者たちが日常生活のなかで感じている悩みや課題の解決も重要なのではないか?」と、考えるようになったのがきっかけです。

フェムテック tv:そのひとつが生理などの性にまつわる問題だったのですね?

石川さん:そうですね。当社の若者マーケティング研究機関『SHIBUYA109 lab.』が、Z世代を対象に生理に関する意識調査を行ったのですが、実に8割以上の女の子たちから、生理の際に何らかの困りごとを感じたことがある、と回答がありました。

それらの困りごとを解決するための第一歩として、「タブー感のある性や生理の話をよりオープンにしていこう」と、今回のイベントを開催するに至りました。

フェムテック tv:イベント会場ではオーガニックナプキンの無料配布や、生理に関するアンケートを実施したと伺いました。

石川さん:はい。それに加え、タブー感がありつつも「より多くの人に生理の実情を知って欲しい」「理解して欲しい」というZ世代の本音に応えるべく、パネル展示などで情報発信も行いました。

「生理時の不調を誰にも言えずに苦しんでいる子」「外出中の急な生理に困った経験のある子」「経済的な事情で生理用品が手に入りにくい子」など悩みは人それぞれですが、SHIBUYA109はすべての女子の困りごとに寄り添える施設でありたいなと思っています。

フェムテック tv:きっとSHIBUYA109という若者の象徴でもある場が生理のタブーに挑んだことに大きな意味があったんだと思います。

#PERIOD_ACTION(ピリオド アクション)ウチらの声を、未来へ。』の様子。オーガニックナプキンの無料配布やパネル展示などで情報発信も行なったそう

妊娠・出産の問題も“こうあるべき”と決めつけない

フェムテック tv20214月から現職の石川さん。企業のトップとして、石川さんが描く「理想の働き方」とはどのようなものですか?

石川さん:私自身は仕事がすべてというタイプではなく、仕事もプライベートもどちらも大切にしたいと思っているんです。そのためには、仕事にかける時間とモチベーションのバランスが重要ではないでしょうか?

フェムテック tv:ライフワークバランスですね。

石川さん:一言で言えばそうなのですが、ただ仕事に対するモチベションは人によってさまざまなので、『女性だから』『男性だから』『結婚しているから』『育児中だから』という縛りではイメージしないよう心掛けています。

フェムテック tv:女性特有の健康課題に対してはどうお考えですか?

石川さん:『男女の縛りでは考えない』と言ったものの、女性特有の課題はもちろんありますよね。たとえば、妊娠や出産が女性のキャリアに大きな影響を及ぼすことは事実ですし、今はまだ直面していない女性でも、妊娠には適齢期があることや、その前段階としての結婚や生理の問題が心身に負荷をかける場合もあるでしょう。

フェムテック tv:出産の際には、女性は仕事をいったんセーブせざるを得ないですからね。

石川さん:ただ、それにしても人それぞれの価値観があって良いのだと思っています。「育児中も変わらず仕事に打ち込みたい人」「妊娠後は仕事をセーブしたい人」「妊娠出産を望まない人」など、女性社員が何を願い、仕事とのバランスをどう取りたいのか。「こうあるべき」と決めつけるのではなく、それぞれの気持ちに寄り添うことのできる会社でありたいですね。

オフィスでの仕事風景

家事や育児を自分一人で抱え込まない

フェムテック tv:石川さんご自身も10歳と6歳の男の子の子育て中だと伺いました。育児と仕事を両立する上で工夫されていることはありますか?

石川さん自分にしかできないこと他の人の力をお借りできることをはっきりと分けて考えるようにしています。たとえば子供が今よりももっと小さな頃は、毎週金曜日に地域のシルバー人材センターの方に自宅の掃除をお願いしていました。

週末には家の中がキレイになっているし、平日のバタバタのなかで掃除に手間を取られないので、夫や子供たちにも優しくなれます(笑)。食事も週に1度は近所のフードコートに行ったり、ミールキットを利用しています。

フェムテック tv:掃除や料理は「他の人の力をお借りして」ということですね。

石川さん:そうですね。だから私の家事能力は、ひょっとしたら子供を産んで以降、少しもアップしていないかもしれません(笑)。
でも、そこに対して罪悪感持たないように心掛けています。その分、空いた時間には子供の話をじっくり聞いたり、一緒に遊んだりと、私にしかできないことに時間を割くようにしているんです。

お子さんが小さい頃からキャンプ好きとのことで、週末はよく家族でキャンプへ

フェムテック tv:とは言え企業のトップという立場上、子育て中であっても労働時間は決して短くはないイメージがあります。そのあたりはどうなのでしょう? 

石川さん:残業はほとんどしないで定時で帰っていますよ。子供たちがまだ保育園に通っていた頃は、週2日は夫がお迎え、残りの3日は私がお迎え、と夫婦で育児のルールも決めていました。

ただ、以前は、子供たちを寝かしつけた後、自宅で夜な夜な仕事をすることもありました。でもある時から「こんな働き方をしていても、続く後輩世代の社員は、誰もこうなりたいとは思わないんじゃないか?」と考えるようになって……。それからは、仕事も無理には抱えない、と決めたんです。

フェムテック tv:石川さんご自身が、理想的な“ライフワークバランス”を実践されているんですね。次回は、会社のトップとして取り組んでいることや、今後の夢などに関して伺っていきます。

>>後編の記事はこちら:『生理休暇』を廃止?「性差別がなく、柔軟な職場への改革途中です」

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小嶋美樹
編集者、ライター、ディレクター。大学卒業後、出版社に勤務し、女性誌や実用書・ビジネス書の編集、WEBディレクターなどを経て、2020年からフリーランスに。現在は主にインタビュー記事や女性のライフスタイル・子供の教育系記事の執筆、韓国エンターテインメント記事の編集・執筆など行う。趣味は旅行で、今一番欲しいものは子供たちと日本中を旅して回れるキャンピングカー。