戦後稀に見る「梅毒」ブーム。痛くない腫れや湿疹は、病気のサインかも
梅毒が性感染症であることは、みなさんもよくご存じのことでしょう。しかし近年、患者数が急激に増加しています。しかし、その原因は明確にはなっていません。梅毒は潜伏期間が長く、初期には感染の自覚がないため、複数人と性的接触を行ってしまうことで感染者を爆発的に増やしてしまいます。悪化すると命に係わることもある梅毒について、産婦人科医の柴田綾子先生に教えていただきました。
※2022年3月23日掲載の記事です。
自然と症状が消えていく一方、病状はどんどん進行する
感染者との性行為などでうつる『梅毒』。江戸時代から戦前にかけて猛威を振るいましたが、戦後、ペニシリンの普及により患者数が激減。2010年代初頭までは、年間発症者数は1000人以下に抑え込まれていました。 2013年以降急増を続け、2021年12月には7134人と最悪の記録を更新。決して他人事ではない病気になりました。
「梅毒の原因は、梅毒トレポネーマという顕微鏡でしか見えない細菌です。性行為の際、皮膚や粘膜の小さな傷からこの菌が感染することで発症します。感染者とコンドームなしでセックスしたり、アナルセックスやオーラルセックスでも感染する可能性があります」(柴田先生・以下同)。
感染から1~3か月は無症状のことが多く、その後に、『性器や陰部、口の中にブツブツがでる』『皮膚や手足の裏に赤いブツブツがでる』『足の付け根や首にしこりができる(リンパ腫の腫れ)』『唇や舌にできもの(潰瘍)ができる』といった症状が現れます。
「梅毒は初期には無症状のことも多く、ほかの性感染症と比べて感染していることに気づきにくい病気です。その後に現れるブツブツや腫れなどは、多くの場合、治療をしなくても自然に消えてしまい、その後しばらくは無症状の期間が続きます。しかし、体内から病原体がいなくなったわけではなく、体の中で病気は静かに進行します。この期間に性行為をすれば感染を広げてしまうことになるので、注意が必要です」
感染から数年が経過すると、病状は進行し、皮下組織に弾力のあるしこりが発生。さらに進行すると脳や血管、心臓、目などに障害が生じ、最悪の場合は死に至ります。
「近年は命にかかわるような状態で受診するケースはほとんどありませんが、より早めに治療を始めることが大切です」
感染の有無は、血液検査で抗体をチェック
梅毒に感染したかどうかは、医療機関で血液検査(抗体検査)をすれば分かります。
「梅毒は、感染から1カ月程度は検査をしても陽性反応が出ないことがあります。ですから、性行為など感染の機会から1カ月後を目安に検査を受ける必要があります。できればパートナーも一緒に、検査や治療を受けるようにしてください」
検査は、産婦人科や内科、皮膚科、男性ならば泌尿器科などで受けることができます。「恥ずかしくて病院に行けない」という人は、保健所で匿名、無料で行うこともできますので、「もしかして」と不安に思ったら、まずは検査を受けてみましょう。その上で、万が一陽性反応が出た場合は、なるべく早く医療機関を受診してください。
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