【鈴木奈々×高橋怜奈先生】生理不順は女性ホルモンの不調? 子宮まわりから起こる病気の予防策は?|後編
新連載、後編の今回は、最近友人の周りで婦人科トラブルが多いという鈴木奈々さん。心配性な性格から、ご自身の不調もすぐに婦人科へかかるほど、健康管理への意識は高いそう。生理不順からはじまる病気や、今話題のHPVワクチンについて。知っておくべき婦人科の病気を、婦人科医師の高橋怜奈先生にうかがいました。
3カ月生理が来なければ、婦人科へ!
鈴木奈々さん(以下鈴木さん):昔から、少しでも生理が遅れてしまうとすごく心配で! そもそもどれぐらい遅れたら生理不順なんですか?
高橋先生: 一週間以内の変動なら、問題ないです。3カ月、生理がこなければ婦人科を受診してほしいですね。
鈴木さん:え!? 3カ月も様子をみていいんですか!? 意外と長くて驚いています。私は5日来ないだけでもすごく心配になってしまったので…。
高橋先生:気にしすぎると来なくなってしまうこともありますから、あまり神経質になりすぎるのも良くないですね。ただ、3カ月生理がこない時は、なるべく早く婦人科へ来てください。
昔、10代半ばで生理が止まってしまったのに、10年間放置をした結果、20代で閉経してしまった女性がいらっしゃいました。卵巣の機能は長期間低下したままになっていると治療をするのはとても難しいんです。
不妊だけではない、恐ろしい生理不順
鈴木さん:20代で!? つまり子供をつくることもできないってことですか…?
高橋先生:そうなんです。若くても、長年生理が来ないのをそのままにしてしまうと閉経してしまうこともあるんです。もちろん、閉経して卵巣機能が戻らなくなってしまったら、子供をのぞむことは難しいでしょう。
でも、生理が止まるというのは、不妊以外でもたくさんの健康被害が起こってしまうんですよ。例えば、女性ホルモンは骨をつくる働きもあるのですが、閉経してしまうと、その働きも低下してしまい骨粗しょう症になるリスクが上がってしまいます。それから、肌も乾燥するようになります。
鈴木さん:骨粗しょう症って、お年寄りがなる病気だと思っていました…。女性ホルモンって色々な働きがあったんですね。
高橋先生:毎月の生理は面倒なことも多いですが、ピルなどで自主的に止めたりコントロールをする以外で、生理が遅れたり来ないことは、女性ホルモンの不調である可能性も。身体の変化を敏感に感じ取って、不調をキャッチしたら婦人科を受診するようにしましょう。
鈴木さん:以前、生理中に下腹部のハリが酷くて婦人科へ駆け込みました! それぐらい小さな不調でも、受診をしていいんですか?
高橋先生:ご自身の身体をしっかり見ていて素晴らしいですね! そういった小さな変化での相談でも、もちろん問題ないです。
生理って、子宮内膜がはがれたものが、子宮に溜まって腟を伝って外に出ることなのですが、それが卵管を通ってお腹の方に逆流してしまうことも多く、生理中ってお腹の中に血が溜まっていたりするんですよ。それが原因で、子宮内膜症になってしまうこともあるんです。なので、鈴木さんのように下腹部のハリで受診をすることも、とても大切ですよ。
鈴木さん:心配性でよかったです…! 前回、ピルやホルモン治療で排卵や生理をコントロールする方が様々な病気のリスクが下がるとおっしゃっていましたが、子宮内膜症も生理がなければリスクが下がる病気のひとつってことですね。
高橋先生:そうですね。ピルなどで生理や排卵の回数をセーブすることは、卵巣への負担も減りますし、子宮内膜症をはじめ、様々な病気を予防できます。
最近ではIUS(ミレーナ®)という、子宮にホルモンが入った細い棒状のものを挿入して生理をコントロールするものもあります。これは一度入れると約5年間生理を軽くすることができます。月経困難症や過多月経の人に保険適応で使用できます。
避妊目的だけだと自費になりますが、ピルを毎日飲めない方やピルの服用でリスクのある方にはおすすめです。5人に1人くらいは安全に、生理が全くこなくなります。
鈴木さん:5年も止められるんですか? 人によっては生活も楽になるかもですね…!
できれば男女問わず打って欲しい、HPVワクチン
鈴木さん:生理をコントロールする方法は、色々選べるんですね! あ!病気といえば、HPVワクチンにすごく興味があるんです! 打とうかなと考えていて…。
高橋先生:素晴らしい! とてもいい選択だと思います! HPV(ヒトパピローマウイルス)は、子宮頸癌の原因になるウイルスです。子宮頸癌は年間1万人が発症し、約3000人が亡くなっているとても怖い病気です(※)。
実は子宮頸癌の原因となるHPVは、性交渉の経験のある80%以上の人が人生で1度は感染するとされています。通常は感染しても自然に体から排除されてしまうのですが、持続的に感染が続いてしまった一部の人が、子宮頸癌の前癌病変や子宮頸癌を発症してしまいます。それらを防ぐために、HPVワクチンの接種を推奨しています。もちろん100%予防できるわけではないので、子宮頸癌検診も必須です。
HPVウイルスは、男女関係なく持っているため、海外だと男女で打つものという認識が広がっているんですよね。日本ではまだまだ、認知もされていませんが…。特定の相手が定まっていない、若い人こそ打っておくべきだと思います。
※出典:共益社団法人日本産科婦人科学会「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」
鈴木さん:HPVワクチンは、女性だけが打っても効果はあるのでしょうか?
高橋先生:そうですね。例えば今、鈴木さんがHPVワクチンを打っている場合、HPVに感染していない状態で、HPVを持っている相手と行為をした場合、ワクチンを打っていない状態よりも感染のリスクは低くなります。なので、女性だけでも打つ価値はとてもありますよ。
鈴木さん:子宮頸癌って、発症をしてもなかなか気づかないと聞いたんです。子宮頸癌だと気付いた時には進行してしまっていることもあると聞いて…。
高橋先生:そうなんです。初期は全く症状がありません。それに例えば不正出血があったとしても、よくあることだからと受診をしない人も多いです。また、癌は高齢の方が発症するものだという認識だと、まず自分が癌かも、なんて思わないですよね。だからこそとても怖い病気なんです。海外のようにHPVワクチンは、男女問わず多くの人が打ったほうがいいと思います。
鈴木さん:実は私、子宮頸癌の検査を受けたのは約2年ぐらい前なので、早く受けに行かないと!
高橋先生:20歳以上の女性は2年に一度、子宮頸癌の検査を受けるように厚生労働省でも推奨しています。2年に1度は自治体から検診の無料クーポンも届くので、積極的に受診をしてほしいですね。
ちなみに性交渉の経験がない人は、すごく不安な方以外は子宮頸がん検診は無理に受けなくていいでしょう。膣の中に機械をいれたりするので、性交経験のない方だと強い痛みがあったり出血したりすることがあります。それに子宮頸がんの殆どは性交渉によって感染するHPVが原因なので、性交経験のない方が子宮頸がんを発症するのは極めてまれです。ただし厚生労働省の推奨では性交渉の有無は関係ないので不安な人はもちろん受けても構いません。
心配であれば産婦人科で相談してみましょう。性交渉の経験があるけどワクチンがまだ怖いという人も、とりあえずは子宮頸癌検診をしっかり受けるようにしましょう。子宮頸癌の他にも、子宮や卵巣はとてもデリケートな器官です。生理の不順をはじめ、下腹部のハリなど、日々の自分の身体が感じる不調や変化を敏感に受け止めて、気になることはすぐに婦人科へ相談をするようにしましょう。
鈴木さん:ずっと気になっていたことを教えてもらい、嬉しかったです! 女性が自分の身体を守る大切さを、改めて感じました。まずは検診から受けてきます!
鈴木奈々:1988年7月9日生まれ。B型。茨城県出身。2012年に約350本のテレビ出演を果たし、ブレイクタレントランキング女性部門第1位を獲得。以降も多数のテレビ番組に出演。何事にも全力で挑む姿勢、新人タレントさながらの元気さと謙虚さが幅広い世代に支持され、テレビ・雑誌・広告など多方面で活躍中。
instagram:@nana_suzuki79
高橋怜奈:東邦大学医療センター大橋病院・産婦人科在籍。医師であり、プロボクサー。産婦人科YouTuberとしても活動。自身のSNSをはじめ、テレビや雑誌などで女性のデリケートな悩みに答える。
YouTube:産婦人科医YouTuber高橋怜奈
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