PMS/生理 フェムテック/ケア rssout by 木川誠子

女性のメンタルヘルスは生理の状態がバロメーター

厚生労働省から、“女性はストレスを抱えやすい傾向にある”という調査報告があったのは知っていましたか?「その背景には女性ホルモンの変動が関係しています」と、産婦人科医であり、女性のヘルスケアアドバイザーでもある小野寺真奈美先生が教えてくれました。その対策になるのは、やっぱり自分の生理(月経)の状態を知っておくことだそうです。

30~50代がもっともストレスを抱えやすい

まずは女性のストレス傾向を、厚生労働省の調査『国民生活基礎調査(2019年度版)国民生活基礎調査(2019年度版)』の報告から見てみると、日常生活の悩みやストレスの有無に対しては、47.9%の人が「ある」と回答しています。この「ある」と答えた人の性別は、男性は43.0%、女性は52.4%とやや女性のほうが高くなっています。

さらには、「ある」と答えた47.9%の年齢分布を確認すると、男女ともに30代、40代、50代が同じくらいで60%前後ともっとも高い結果になっています。

「実はこの30~50代の世代は、女性ホルモンの変動から見ても成熟期から更年期に移行していく時期と重なります。つまり女性ホルモンの状態が大きく変化する時期にストレスを抱えている女性が多いことになります。それは、女性ホルモンの分泌を担う、視床下部という器官が影響しています」(小野寺先生・以下同)

女性ホルモンとストレスの関係性

「女性ホルモンの分泌は、脳の中心部あたりに位置する視床下部が指令を出すことで行われています。この視床下部はたくさんの神経核から構成されており、体温調整やストレス応答、摂食行動や睡眠などの生理機能をはじめ、自律神経の中枢も担っています。

女性ホルモンは、視床下部から号令が出されるとホルモンの司令塔と言われている脳下垂体を介して、卵巣に伝わることで分泌されます。そして、きちんと分泌されたかどうか、卵巣の状態を視床下部へフィードバックされます。この一連の働きが正常な状態です。

ただし、物理的に身体が疲れている、落ち込む出来事があり気持ちが沈んでいるなど、心身にストレスを受けると自律神経の中枢でもある視床下部に影響が出てしまい、そのため女性ホルモンの分泌も正常に行われない可能性があります」

女性ホルモンの変化とライフスタイルの変化が重なる時期

女性ホルモンとストレスの関係性以外に、社会的立場の変化もメンタル面に影響を与えているようです。

「女性ホルモンのバランスは生理周期に合わせて変動していますが、ライフステージによっても変化しています。

先ほどの調査報告にあったように、ストレスを抱えやすい30~50代は女性ホルモンの状態が成熟期から更年期へと移行する時期です。また、数年単位で生活やライフステージが変化する時期でもあります。例えば、仕事をしている人だとある程度のキャリア経験があり、社会人として重要なポストを任されるなど、社会的な立場も変化しやすいです。プライベートでは、妊娠と出産をはじめ、子育てと両立しながら生活している人もいると思います。また子育てだけでなく、介護などの問題も関わってきます。

女性ホルモンの状態の変化と社会的立場やライフスタイルの変化が重なることで、これまで以上にストレスを感じやすく、メンタルが不安定になる可能性は高まります」

生理の周期や状態を記録し、可視化する

女性ホルモンの状態は、メンタルヘルスを考えるうえでも重要なカギになります。そのサポートとして有効的なのが、生理日記をつけること!

「生理は、女性ホルモンの状態を知るバロメーターになります。ピルを服用している、いないに関係なく、生理管理ができるアプリなどを活用して、まずは周期を記録してください。すでに、生理周期を把握している場合は、生理前や生理中の心と身体の状態、さらには経血やおりものの状態も記録していくと、より可視化しやすくなります」

変化が起きた時は専門機関を受診する

生理周期や状態を記録し、可視化することで客観的に判断しやすくなるというメリットが。変化にも気が付きやすくなるため、その対策を講じやすくもなります。

「生理日記をつけることは安心材料にはなります。ただし、変化が起きた場合は専門機関を受診してください。

病院に行くほどではないと自己判断するのは危険ですし、こんな悩みで受診するのは申し訳ないかもと遠慮する必要もありません。どの科を受診したらいいのか分からないという場合は、まずは婦人科に行ってみてください。診察を行ったうえで、他の科への受診が良いなど判断した時は、適した科など教える場合も、患者さんから受診先などを相談されることもあります。

自分自身が気になったことを相談するのも、メンタルヘルスの対策のひとつです」

 

小野寺真奈美先生
おのでら・まなみ 日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本女性医学学会認定専門医、日本医師会認定産業医、女性のヘルスケアアドバイザーとして、女性医療クリニックLUNA婦人科にて診療を行う。
https://www.luna-clinic.jp/

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木川誠子
出版社勤務を経て2009年よりライター・エディターのフリーランスとして活動。ウェルネスや美容、ライフスタイルのコンテンツを発案し、ディレクションから執筆まで一貫して携わる。2016年から兼ねてより関心のあったフェムテック領域に本格的に取り組み始め、フェムケアをはじめ、五感を通して自分を知るための”フェムアートプロジェクト”を立ち上げる。2022年には「株式会社k company」を設立し、その実践の場を創造・提供している。ライフオーガナイザー1級/アロマ心理/公認フェムテックマイスター(TM)