フェムテック/ケア by 木川誠子

タブーを打破した伊勢丹新宿店。フェムテックアイテムをグランドフロアで取り扱う意義

フェムテックのムーブメントが拡大している中で、伊勢丹新宿店でもフェムテックをコンセプトにしたPOP UPストア『センシュアル ・ライフ~わたしと向き合い、あなたとつながるフェムテック~』が開催中です。(2021/4/6(火)まで)。しかも、POP UPストアが展開されているのは、デリケートゾーンのケアアイテムなども取り扱う地下2階の『ビューティアポセカリー』ではなく、より多くの人が通る場所である1階のグランドフロア。この試みはこれまでになかったこと!

そこで、今回のPOP UPストアのキュレーションを行い、日本においてフェムテックの流れを作ったパイオニア的存在でもある植物研究家の森田敦子さん、そして、伊勢丹新宿店の担当者 永野友香さんに、開催に至るまでに込めた思いなどを伺いました。

ワクワクする気持ちにフォーカス

「フランスで植物療法学を学ぶためには、食べること、眠りと同時に、性科学(セクソロジー)も必要でした。そういった経緯もあり、植物療法と性科学をフランスで学んで帰国したのは1997年になります。そして、2013年に『アンティーム オーガニック』というデリケートゾーンのケアアイテムを作りました。その当時は、専用アイテムがなかっただけではなく、デリケートゾーンと言うだけでも怒られてしまう風潮がありました」

今でこそ定着し始めているデリケートゾーンのケア。森田さんはいち早くその大切に気付き、啓蒙しています。

「デリケートゾーンという言葉は、厳密には医学用語ではないのですが、自分事としてとらえていただきやすいと思って用いています。

フェムテックの本質的な部分は、女性ならではの悩みや課題を解決するだけではなく、それぞれのライフスタイルで輝き続けるためにサポートをする物や事柄、人とのリレーションシップ。さらには、オーガズムや子宮がキュンとする感覚といった自分自身の身体から起こる反応や気持ちなども含まれていると考えています」

健康で幸せに過ごすことも含めてフェムテックと捉えているその思いは、POP UPストア『センシュアル ・ライフ~わたしと向き合い、あなたとつながるフェムテック~』にも反映されています。

「例えば、赤いリップを塗ると気持ちがときめきますよね。今回のPOP UPショップは女性がワクワクするものをやろうという思いが始まりにあります。吸水ショーツや経血カップなどのアイテムとの出会いの場所ではありますが、女性が本当にワクワクする気持ちに焦点を当てています」

2013年から膣ケアアイテムの取り扱いをスタート

その思いを一番初めに共有したのは、会場となる伊勢丹新宿店の担当者、永野友香さん。ただ、POP UPストアを開催するに至るまでには、さまざまなハードルがあったそうです。

「フェムテックの企画をやってみたいと社内で手を挙げ、実際に開催することになった時、社内はもちろんですが、お客様も含めたみんなのマインドを変えていくのがひとつの仕事だと思いました。

女性のケアは男性にとっても大切なことであり、パートナーと幸せになるきっかけにもなると思います。さらに言えば、家族みんなの幸せにもなると考えています。そのコンセプトを体現するべく、まずは、明るくオープンに1階のグランドフロアで、ゆっくり楽しく買い物ができる環境を作ること。そして、プレジャーテックアイテムや膣トレなど、これまで百貨店ではタブー視されたアイテムもきちんと見せて、商品にあった専門的な知識を提供していくこと。そう考えた時、思い浮かんだのが森田敦子さんです。

森田さんとは、私が地下2階にある『ビューティアポセカリー』のバイヤーをしていた約8年前に出会いました。当時の『ビューティアポセカリー』には、身体の外からキレイにするものはもちろんですが、内側をキレイにするインナーケアとして漢方などはあったのですが、口や目と同じ粘膜である膣周りと、膣をケアするアイテムがありませんでした。自分自身でいろいろ調べていた時に森田さんとの出会いがあり、誕生したばかりの『アンティーム オーガニック』を取り扱うことになりました。

当時は今以上に知られていなかった分野でもあったため、社内からはいろんな意見がありましたが、いざ店頭に並べてみると悩んでいた女性がとても多かったです。否定的な声はまったくありませんでしたし、関心度の高さは当時も感じていました」(永田友香さん)

百貨店だからこそできるフェムテックの発信

今回のPOP UPストアは、お悩みを持った方でも迷わず来られて、ちょっと気になった方でも入れる、さらには、誰もが通る1階のグランドフロア。だからこそ、デザインやアイテムの配置も、本気で向き合いたい人のために工夫されています。

「パリにあったセレクトショップ『コレット』をイメージしました。そして、野次馬的に入って来られないように壁は低めにし、プレジャーテックアイテムや膣トレは見やすい正面に置きつつも、ゆっくり見ていただけるように奥にも並べています。気分を高めて美しさを追求することでのフェムテックもご提案したいので、ランジェリーやコスメ、フレグランスなども展示しました。

フェムテック市場は年々拡大しており、今、トレンドのように取り上げられていますが、私たちは必要なことだからこそやっていきたいと思っています。百貨店が発信するからこそ必要なことなのだという、社会のムーブメントになってくれたら嬉しいです」(永田友香さん)

きっかけに出会う場所

オープンに話せる環境を作り出すことも、POP UPストアに込められた思いです。家族やパートナーと、心や身体について話し合うことの大切を伝えるために、紗栄子さん、辺見えみりさん、野宮真貴さんと各世代のスペシャリストも参加し、発信しています。

さまざまな角度からフェムテックに触れることができる『センシュアル ・ライフ~わたしと向き合い、あなたとつながるフェムテック~』には、自分のココロとからだを知るきっかけとなる出会いが待っているかも。

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【イベント詳細】

センシュアル・ライフ~わたしと向き合い、あなたとつながるフェムテック~

会期:317日(水)~46日(火)

会場:伊勢丹新宿店 本館1階プロモーション

森田敦子氏

株式会社サンルイ・インターナッショナル代表。フランス国立パリ13大学で植物薬理学を本格的に学び、帰国後、植物研究に基づいた知見を社会に提供するため、デリケートゾーン&パーツケアブランド「アンティーム オーガニック」の処方・ 開発や、「ルボア フィトテラピースクール」を主宰。2020年、女性の一生をサポートするトータルライフケアブランド 「Waphyto」を立ち上げる。私生活でも42歳で自然妊娠・出産。著書多数。

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木川誠子
出版社勤務を経て2009年よりライター・エディターのフリーランスとして活動。ウェルネスや美容、ライフスタイルのコンテンツを発案し、ディレクションから執筆まで一貫して携わる。2016年から兼ねてより関心のあったフェムテック領域に本格的に取り組み始め、フェムケアをはじめ、五感を通して自分を知るための”フェムアートプロジェクト”を立ち上げる。2022年には「株式会社k company」を設立し、その実践の場を創造・提供している。ライフオーガナイザー1級/アロマ心理/公認フェムテックマイスター(TM)