江戸時代の女性は月経コントロールをしていたって本当? 歴史からひもとく!
「骨盤底筋を鍛えると経血コントロールができるようになるらしい」「江戸時代の女性は経血コントロールができていたらしい」など、経血コントロールというキーワードを聞く機会が増えています。生理用品も時代とともに変化していることを考えると、「生理用ナプキンがない時代は経血コントロールをしていたのかも」と、実際にはどうだったのかが気になります。
そこで、女性に関するテーマを中心に研究を行う歴史社会学者の田中ひかるさんに、時代背景や当時の暮らしをひもときながら経血コントロールについて教えていただきました。
INDEX
経血コントロールをしていたという記述は見当たらない
経血コントロールとは、トイレで尿や便を排泄するように、生理中の経血をある程度自分の力で調節して排出する方法のことです。尿意を我慢するのと同じように、少しの時間なら経血を出さないようにすることは可能なのでしょうか。
「結論からお伝えしますと、昔の女性が経血をコントロールしていたとされる史料をみたことはありません。そもそも月経は長い間、タブー視されていたため、記録自体が少ないのです。
月経がタブー視されていたのは、世界の主要な宗教が、女性は月経があるために穢れた存在であると説いていたからです。そのため、月経中の女性を小屋へ隔離する慣習や月経中の女性は食品を加工してはいけないなどの慣習が世界各地で見られました。日本でも平安時代に血穢が規定されています。
それらの慣習は、明治時代に入って間もなく政府によって禁止されます。同時に、近代的な国家を目指すために富国強兵のスローガンが掲げられ、女性に丈夫な子どもを産んでもらう必要性から、月経管理される方向に動きます。また、性別役割分業を根拠づけるために、女性は月経があるために心身が不安定であり、学業や職業には向かないということが医師や教育者らによって繰り返し唱えられます。こうした主張は、当時の最新西洋医学に基づいていました。
このような時代背景から、当時の女性が月経を前向きにとらえるのは難しく、どのように向き合ってきたかを詳細に残すこともなかったと考えられます。その後、1960年代に日本初の生理用ナプキンが登場し、広告戦略の過程で、月経は生理現象であり、恥ずべきことでも、忌むべきことでもないと説いたことにより、月経観に大きな変革が起きました」(田中ひかるさん・以下同)
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