フェムコト 連載 by 橋本範子

性のことをオープンに話せる“空気感”をつくり、セルフプレジャーを肯定する世の中に|株式会社TENGA・犬飼幸さん

自分の不調にアグレッシブに向き合うことが大事

フェムテックtv:今現在のセクシャルウェルネスに関する世の中の認識は、どう捉えていますか?

犬飼さん:セクシャルウェルネスって、まだまだ一部の意識の高い人のものかなという印象です。フェムテックもそう。有名人や業界の方だけではなく、いわゆる一般の主婦の方々にも利用していただきたいけど、頑張れば頑張るほど遠ざかっている気がしています。この業界にいると、認知度100%と思いがちですが、そんなことはないんですよね。

弊社でも20〜50代の男女800人に“フェムテックという言葉を知っているか”聞いたところ、2割くらいの認知度でした。グッズを使っている人に関していえば、ほぼいない。ブームについては過半数以上が“いいと思う”という肯定的な意見はお持ちでした。また“セクシャルウェルネスという言葉を知っているか”となると、1割程度の認知度しかありませんでしたね。

フェムテックtv:確かにセクシャルウェルネスは“性の健康”という、とても曖昧なもののようにも思います。

犬飼さん:私の中では“自分の性的欲求を肯定して楽しめて、心身が満ち足りている状態”と定義しています。ちなみに、体の悩みは女性4割、男性7割が抱えていました。“セックスで満足感を得られているか”に関していえば、“得られている”と答えたのは、男性は約20%に対し、女性は10%を切る結果に。女性のほうがよりお悩みが深かったり多く抱えていたりするものなのだと思いました。

フェムテックtv:そのお悩みにTENGAの女性向けセルフプレジャーアイテムのirohaも役立ちますよね。

犬飼さん:ただ複合的なお悩みをお持ちの方も多くて、アイテムだけで解決できないことも正直あるんですよね。女性たちの幸せな人生を助けていくためには、生理用アイテムなども含めてサポートできるようなフェムケアブランドにアップデートしていきたいなと思っています。

フェムテックtv:犬飼さん自身が、女性特有の健康課題を抱えたことはありますか?

犬飼さん:生理痛とPMSは重かったですね。TENGAに入社するまでは生理痛が重いときの解決方法は、薬を飲むか使い切りカイロを貼るか我慢するかの選択肢くらいしかありませんでした。それが会社メンバーは、低用量ピルをメーカー指定して使う人、ミレーナを使う人など、自分の不調に対してアグレッシブに向き合っていることに気づいたんです。そこから当たり前のように自分の不調を話すことができるようになりました。

「前オフィスの最終出社日の1枚。ちょうど私が仕事の電話をしているときに撮影が始まり、同僚たちが一緒に映るために周りに集まってくれました」

フェムテックtv:オフィスにお伺いさせていただき、またお話を聞かせていただいて思ったのは、とても素敵な環境でお仕事をされているなということ。そんな犬飼さんの1日のスケジュールを教えてください。

犬飼さん:7〜8時くらいに起きて、朝食に大体バナナなどのフルーツを食べて、お化粧をして、「時間ない!」と言いながら走って会社に着くのが11時前くらいですね。ミーティングを1本やったら、ランチは会社周辺を一人で散策して開拓しています。午後はミーティングを3〜4本したり取材準備をしたりして、19時過ぎには帰宅。うちの会社は、20時にはもうほとんど人がいないんですよ。帰ってから食事をつくるのは面倒なので、パートナーと待ち合わせして夕食は外食で済ませることが多いですね。

「仕事終わりは夫と一緒にいろんな街やお店を開拓しています。よく出没するのは、新橋や渋谷あたりです」

フェムテックtv:その中で、セルフプレジャーの頻度はどれくらいですか?

犬飼さん:今週は多めだなというときもあれば、2〜3週間していないなってことも。忙しいとすることを忘れてしまうんです。YouTube観るのと同じ感覚で、忙しいと観る時間ってなくなりますよね。暇なときはYouTubeかTikTokを観るか、長風呂するか、セルフプレジャーするか。セルフプレジャーは、私にとってはSNSを見るのと同じぐらい日常なんです。

フェムテックtv:日常のこともあれば、まだまだ非日常なフェムケアもあると思います。注目しているトピックスはありますか?

犬飼さん:男性が喜ぶ名器をつくる“腟整形”が流行っていると聞いたのですが、デリケートゾーンの整形ってまだ誰も正解がわかっていないんですよね。誰もゴールを知らないのに“とりあえず膣内にヒアルロン酸を打ち込んでおけ”という状態らしくて。デリケートゾーンの整形が悪いということではなく、知識がないまま実行してしまうのはコミュニケーション不足なのかなと思います。

男性も一人ひとり好みが違う。女性が求めるものとパートナーが求めるものが違うことはあると思うんです。マスターベーションとセックスも別物。ただそういった性教育もされていないし、知る術もない。そこが問題なのかなと思っています。それに対して弊社ができることがあるんじゃないかと、課題感として持っていますね。

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橋本範子
女性誌を中心に手がける編集・ライター。趣味は深夜ラジオを聴くこと。小型船舶2級所持。