フェムコト 連載 by 橋本範子

“いつもある生活は保証されていない”からこそ好きなことを仕事にして生きる

地方で働く女性、都心で働く女性、子育てをしながら働く女性、さまざまなライフスタイルを送る女性たちを取り上げ、女性の健康課題や社会課題について考える対談コンテンツ『フェムコト』。

今回対談させていただいたのは、マルサラ飲食店・店主の春井春乃さん。デザイン会社から飲食業界へとキャリア変更をして、現在は三軒茶屋の人気ケータリング店を経営。一番好きなことを仕事にした女性です。現在、37歳。仕事のこと、体のこと、パートナーとのことなど赤裸々にお話しもらいました。

〈Profile〉

マルサラ飲食店・店主 春井春乃さん

はるい・はるの 大学在学中から大好きな映画プロデューサーの元で映画のチラシを作るなどデザイン関係に従事。その後、デザイン会社に就職。28歳で飲食業界へ。表参道のフレンチレストラン、三軒茶屋にあるスタンディングバー『霧の中の風景』勤務を経て、2016年に東京・三軒茶屋でマルサラ飲食店をオープンし独立。コロナ禍以降にスタートしたケータリングは「美しくて美味しい!」と話題に。趣味はサウナとキャンプ。

Instagram:@hal_haruno

ー春井さんの3つのルールー

RULE1.同じ時間に寝て、同じ時間に起きる

RULE2.月の周期に合わせて心と体のバランスを保つ

RULE3.好意的な目線で物事を見る

元パートナーに反対されながらも28歳で飲食業界へキャリア変更

フェムテックtv:幼少期から料理好きとのことですが、どんなきっかけがあったのでしょうか?

春井さん3人兄弟の末っ子で、兄2人と両親がいつも家で麻雀をしていたんです。そうなると、その輪の中に入れない。せめて夜食を作って家族に振る舞おうと思い、缶詰を凍らせてシャーベットにするとか簡単なものを作り始めました。それから休日には兄たちにごはんを作ることも。

居場所がほしくて始めた料理で褒めてもらったことが、ずっと心に残っていました。漠然と将来はこういうことをしていきたいなと。それが小学生時代の話です。

フェムテックtv:お兄さんたちも当時は小学生だったんですよね。すでに麻雀デビューしていたことに驚きです(笑)。

春井さん:早いですよね(笑)。初めて料理をしたのはもう少し前で、4歳のときにクッキーを作りました。母が家庭科の先生だったので、いろんな料理を教えてもらっていましたね。

高校を卒業したら料理の専門学校に行くつもりでしたが、両親は「大学に行ってくれ!」と。仕方なく2番目に興味のあったグラフィックデザインが学べる学校に進学しました。

フェムテックtv:大学在学中から関わっていたデザインの仕事についてもお聞かせください。

春井さん:映画がすごく好きで、なかでも鈴木清順監督の作品が好きだったんです。就活はせず、鈴木監督のプロデューサーを務める小椋悟さんの事務所で映画のチラシなどを作成していました。

就活をしなかったのは、何をしたらいいかわからないし、ひとまずごはんが食べられればいいというマインドだったので。卒業後も働き続け、その後は映画関係のデザイン会社に就職しました。

OL時代。趣味の山登りへ

フェムテックtv:それから28歳でいきなり飲食業界へ。不安はなかったのでしょうか?

春井さん26歳の誕生日に東日本大震災が起こりました。いつもある生活は保証されてないんだと思ったとき、どうせ安定していないなら好きなことをしたほうがいいと思ったんです。デザイン会社では楽しく働いてそれなりにお給料ももらえていて、不満もなかった。ただ、こなしてはいるけど、素晴らしいと言えるほどの才能はない。

ぬるま湯に浸かっている感じはありました。今思えば、このまま同じ場所にいることのほうが不安だったんだと思います。休日に料理を作っているほうが、自分的に生き生きできていましたしね。

飲食店として営業してていた頃の様子。

とはいえ、2年ほど考えてから飲食業界に進みました。震災直後の26歳のときに結婚して、当時はパートナーからの反対もあったんです。「急に飲食なんて、何を言ってるのかよく分からない」と。それでもこの道に進み、お店をスタートして1年後の32歳になったくらいのタイミングで離婚しました。パートナーからしたら、私の人が変わったように感じたんだと思います。同業じゃないと分かり合えないことも多いですしね。

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橋本範子
女性誌を中心に手がける編集・ライター。趣味は深夜ラジオを聴くこと。小型船舶2級所持。