フェムコト PMS/生理 連載 by 木川誠子

自分らしい働き方を創る手助けを 株式会社カインズ 人事戦略・企画部 健康経営推進グループ 齊藤瑞穂さん|フェムコト インタビューvol.8

生理やPMS、セクシャル分野まで女性のカラダの悩みを解決するメディアサイト『フェムテック tv』と、未来を作るSDGsマガジン『ソトコト』が新たに女性のウェルビーイング向上を目的として立ち上げた『フェムコトプロジェクト』。

8回目となる今回は、ホームセンター『カインズ』が、女性の健康課題や女性の活躍について本格的に向き合うべく立ち上げた、メンバー(従業員)の心身の健康作りを目的とした取り組みを提案する部署『健康経営推進グループ』の齊藤瑞穂さんにお話を伺いました。これまで健康に関する悩みに直面することがなかったと言う齊藤さん。けれど、『健康経営推進グループ』に配属されたことで葛藤しながらも、さまざまな課題に立ち向かっているそうです。

〈Profile〉

株式会社カインズ 人事戦略本部 人事戦略・企画部
健康経営推進グループ 齊藤瑞穂さん
2007年に中途入社し、店舗販売業務を1年経験後、教育訓練部店トレーナーとして新店の立上げと初期教育を担当。その後、新店オープンメンバーとして店舗に配属後、販売業務に従事しながら2度の出産を経験。育休復帰後に人事部に配属となり、人事制度設計や労務を経験後、2021年9月に新設された健康経営推進Gに着任。現在は一緒に働くメンバーの”心身の健康促進”や”女性の活躍推進”を担当。

これまで生理に関して考えたことがなかった

フェムテック tv:ホームセンターでの業務は体力的にハードなイメージがありますが、これまで健康課題にぶつかることはありましたか?

齊藤さん:私自身は健康なこともあり、課題にぶつかるということはありませんでした。仕事柄、重たいものを持ちますし、フォークリストを使用することもありますが、入社当初からそれらのことをバリバリとこなすかっこいい女性の先輩がおり、仕事に向き合う姿勢はポジティブでした。

男性と同じように働きたいという思いがあったわけではなく、性別に関わらず、その先輩の働く姿を見て、自然と憧れを抱き、前向きに働いていたという感じです。

フェムテック tv:生理前や生理の時に大変だと感じたこともありませんでしたか?

齊藤さん:私自身、生理痛などの症状がほとんどなかったこともあり、生理を気にしたことがなかったというのが正直なところです。生理は毎月あるものだし……という感覚で。

ただ、健康経営推進グループが立ち上がり、社内でヒアリングを行いました。その中には、「生理が重い」という回答があり、さらには「生理が重たくても我慢するものだと思っている」「上司が男性だと言いにくい」「言っても理解されないだろう」という声もありました。

私自身もまだまだ勉強中なところがあるのですが、健康課題について外部の方と話す機会があり、その時に「生理にまつわることは我慢するものではなくて、その裏側には病気が隠れていることもあるんだよ」と言われました。「そうなんだ!」と、私は初めて聞いた話だったこともあり、「そういったことを伝えていかないと」と思いました。

グリーンの担当をしていたので、植物好きに。家で家庭菜園をしているそう。どこでもガーデンフレームというカインズの商品は、簡単に家庭菜園を作ることができる便利アイテム

健康経営推進グループのメンバーになった今のほうが悩みは多く

フェムテック tv:その話を聞いてから生理との向き合い方は変わりましたか?

齊藤さん:はい。生理管理アプリで生理周期を記録するようになりました。すると自分の生理周期が短めだということに気が付きました。生理周期が24日だと、短いんですよね?

フェムテック tv:生理周期の基準は、2435日と幅が広いんですよね。生理周期を記録し始めて気が付いたことはありますか?

齊藤さん:今は周期だけを記録しているのですが、生理前になると気分が沈みやすいこともある、ということも最近知り、「そう言われてみれば……」と、思い当たることがあったりもします。知識として知っているだけで罪悪感が薄れることも分かりました。

フェムテック tv:齊藤さんは妊娠、出産を経験されていますが、その期間に不安になること、気になることはありましたか?

齊藤さん:妊娠していたのは店舗にいた頃だったのですが、妊娠前と変わらず重たいものも持っていました。当時はあまり気にしていなかったけど、今振り返ってみると「お腹が張っていたんだな……」と思うことはあります。

私自身、生理にまつわること、妊娠期間も含め、悩みになるほどの症状がなかったというのが大きかったと思います。だから、お客様に「ありがとう!」と言ってもらえることが嬉しくて、仕事をすることを楽しめていました。逆に、健康経営推進グループのメンバーになった今のほうがいろいろと悩んでいます。

フェムテック tv:どんなことに悩んでるのですか?

齊藤さん:『DIY HR』(※)といって、自分のキャリアを自分で作っていく取り組みをしているのですが、今までは指示されたことをやるのが当たり前だと思っていました。でも今後は、「自分は何がやりたいのか」「どうしたいのか」を考えて実行することを当たり前にしていく必要があると思いました。

カインズが昨年9月に発表した「じぶんらしい働き方、創ろう。」 という新たな人事戦略のコンセプト。カインズはDIY Do It Yourself)を推進しており、働き方も自分で創ることを推進している

私自身の話だと、二人目が誕生した時は時短勤務をしていたのですが、今はフルタイムで働いています。保育園から「熱が出たので迎えに来てください」と連絡が入っても、祖母にお願いしたりして仕事を優先しているところがあります。でも友達から「子どもとの時間は今しかないよ」という話を聞いたりすると、「やっぱり時短にしたほうがいいかな。それとも正社員は辞めてパートがいいかな」「でも、給与の面も変わってくるし……」とグルグルと考えては悩んでいました。

カインズがオフィシャルユニフォームパートナーとして応援しているサッカーチーム・ザスパクサツ群馬。社内ファンクラブの観戦バスツアーに息子さんと参加した時の1枚

目指すのは働く人がキラキラ働けていてハッピーな環境

フェムテック tv:どのように答えを導き出したのですか?

齊藤さん:上司に11での面談をお願いして、正直に「悩んでいます」と話してみたんです。すると、「子育てにはある程度お金も必要だし、今後のことも考えて正社員のままで時短に切り替えてもいいんじゃない」など、的確なアドバイスをしてくれました。

悩んでいる時は、自分の強みも分からなくなってしまうので、どのような働き方が自分に適しているのかが見えにくくなります。そのあたりも上司と話したことで改めて認識することができました。

フェムテック tv:答えを導く過程で、齊藤さんが重要だと感じた点はどんなことでしたか?

齊藤さん:情報が大切だと思いました。社内で実施しているセミナーで情報を得たり、本も読むようにもなりました。これまでは園芸や花など、興味があるジャンルの本だけだったのが、最近はビジネス系やロジカルシンキングなども読んでいます。今はSNSやネットなど、学ぶツールはたくさんありますよね。

同僚との3ショット。健康経営推進グループに異動になり、戸惑うことも多いが、密にコミュニケーションをとりながら取り組んでいる

フェムテック tv:だからこそ情報の精査が大切になりますが、齊藤さんはどのように行っていますか?

齊藤さん:得た情報を比べるようにしています。例えば、先ほどのフルタイムにするか、時短にするかという話も、どちらにもメリットとデメリットがあります。そのひとつひとつを比べてみて、必要ならばノートに書き出しながら最終的に判断しています。

フェムテック tv:先ほど、自分の強みという話がありましたが、齊藤さんの強みを教えてください!

齊藤さん:その時に上司からはホスピタリティー精神だと言われました。

フェムテック tv:まさに、健康経営推進グループをはじめ、人事戦略本部が行う『DIY HR』の取り組みには必要なことですね。

齊藤さん:はい。私は自分の部署のことなので、ミッションややるべきことなどは理解しています。社内にも浸透させていくことが大切ではあるものの、社員やパート、アルバイトのメンバーの中には情報が伝わらない、情報を取りに行くことに必要性を感じておらずついていけないメンバーがいるのも確か。メンバーが多い分、福利厚生をひとつ変更するにも、まずは店長に伝えて、そこから多ければ何百人というメンバーにも伝達されていきます。その過程で、「どう伝えるのがいいのか」「どう浸透させていくのがいいのか」ということを考えていて、とても難しいことだと感じています。

まずは働く人がキラキラ働けていてハッピーでないと、カインズの強みであるカインドネスを発揮し、お客様へ届けることができません。メンバー全員に時間をかけて少しずつコツコツと伝えていき、浸透させていくことが重要だなと実感しているところです。

フェムテック tv:齊藤さんがまず目指すところはどこでしょうか? 

齊藤さん:一番近い目標でいうと、心身の健康です。とにかく健康が一番大事!

例えば、ガンは早期発見で90%は完治すると言われている中で、人間ドッグを受けていない人がいました。「なんで受けないの?」と尋ねると、「何か病気が見つかった時が怖いから……」と。でも、それは違いますよね。

予防と早期発見がいかに大事かという認識を広めていくことも必要だと感じましたし、ガンに限らず、もし何かあったとしても、社内には相談窓口も支援体制もある。職場全体として復帰を応援する雰囲気があるということを示していくことが重要なのかなと思っています。

私が上司に相談して気持ちが軽くなったみたいに、私自身も、困っている、悩んでいるメンバーの手助けになる存在になりたいと思っています。私ももっともっと勉強します!

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木川誠子
出版社勤務を経て2009年よりライター・エディターのフリーランスとして活動。ウェルネスや美容、ライフスタイルのコンテンツを発案し、ディレクションから執筆まで一貫して携わる。2016年から兼ねてより関心のあったフェムテック領域に本格的に取り組み始め、フェムケアをはじめ、五感を通して自分を知るための”フェムアートプロジェクト”を立ち上げる。2022年には「株式会社k company」を設立し、その実践の場を創造・提供している。ライフオーガナイザー1級/アロマ心理/公認フェムテックマイスター(TM)